第17章 菅原先生の恋愛指南
ガチガチに固まってしまった東峰を見て、菅原も澤村も苦笑する。本人が目の前にいるわけではないのに、想像だけでここまで緊張してしまって大丈夫なのだろうか、と二人は心配になる。
「今からそんなんで、大丈夫か…」
「お、俺だって、や、やる時は、やるよ…!」
「そんなどもりながら言われてもなぁ。説得力がない」
「大地ひどい……」
東峰がまた澤村の言葉に落ち込んで、がくりと力なくうなだれる。
「さわむらー、今ちょっといい?…ってどうしたの東峰。なんかすっごく落ち込んでるけど…」
廊下から三人に声をかけてきた人物は、手にした白い紙をひらひらさせながらうなだれている東峰に目をやった。
太い眉をぐっと下げた顔で、東峰は声のした方に顔を向ける。
「道宮……大地が、スガが、ひどいんだ…」
「なに、どうしたの…?」
全く状況が見えない道宮は、三人の顔を見比べて状況を把握しようと頑張っていた。
けれどいくら三人の顔を見回したところで、話の内容は見えてこない。
「あっ、そうだ!道宮ちょっと協力してくれない?」
「協力?私に出来ることなら…」
「助かるわ!」
菅原に頼まれてすぐさま承諾した道宮だったが、彼女は後で内容を確認してから返事をすれば良かったと後悔する。
「な、大地。ちょっと旭にお手本見せてやれよ」
「は?手本?」
「そ。道宮のこと、名前で呼んでみて」
「え、ちょ、ちょっと、スガ?!それはどういう??!」
いきなりの事態に心も頭も付いていかない道宮は、何故そういうことになるのかと必死に目で菅原に訴えた。
しかし菅原はパチッとウインクを返すだけで、詳しい事を教えてくれそうな気配がない。
「なんで俺が」
「いやぁお願いしますよ~大地さん。旭にいいお手本、見せてやってくださいよ」
「大地、頼む」
「旭お前まで何言いだすんだ」
途中から菅原の意図を汲み取った東峰も、菅原の提案にのっかって、澤村に道宮の名前を呼ばせようと協力の姿勢を見せ始めた。
道宮は今の事態に大混乱していたし、澤村は釈然としない面持ちで腕組みしている。
「…話が、よく見えないんだけど?」
「そうだぞお前ら。道宮だって、困ってるだろ」
「うーんでもさっき協力するって言ってくれたしさぁ」
「大地のお手本みたいなぁ、俺」
「……ったく、お前らなぁ」