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【HQ】恋愛クロニクル【東峰旭】

第16章 応援のカタチ(後編)


「ほら、こないだの練習試合の時。美咲ちゃん、音駒の夜久とめちゃくちゃ仲良さげだったじゃん。あれは旭でなくてもへこむって。嫉妬すんのも無理ない」
「スガ、お前こういうことになると旭に対して優しいのな」
「えっ、俺はいつでも優しいけど?」
「…そうか…?」

 東峰の悩みから話はどんどん遠ざかっているようで、いまだ解決策が見いだせずにいた東峰は深い深いため息をついて、周囲の空気を淀ませた。

「あーもう暗い暗い!そんなに気になるなら後追っかければいいじゃないか、旭」
「それが出来たら今悩んでない……」
「…ほんっと、へなちょこだなお前……」

 容赦ない澤村の言葉に、東峰はまた心臓を抉られたような衝撃を受けた。東峰はうっ、と小さく声を漏らし、その声は次第にかすかに震えだし、しまいにはすすり泣きに近いものになった。

 このメンタルを試合にまで引きずられたら溜まったもんじゃない、と澤村は頭を抱えた。
大きな体が小さく見えるほど落ち込んでいる東峰を見て、菅原と澤村は「早いうちになんとかしなければ」と目と目で会話をしたのだった。


******

 旭先輩がそんな風に落ち込んでいるとは露知らず、私は潔子先輩のお家にお邪魔して、先輩二人でとユニフォーム型のストラップを作るのに没頭していた。
買ってきたフェルトを12人分、手作りの型紙に合わせて2人で切っていく。
黒と白とオレンジのフェルトが、机の上に次々とユニフォームの形になって並べられていった。

「…そういえばさ、美咲ちゃん最近東峰とあんまり話してないよね?何か、あったの?」

 フェルトを切る手は止めずに、潔子先輩が尋ねてきた。
なるだけ普通に旭先輩に接するように心がけていたつもりだったけれど、それは出来ていなかったらしい。
気持ちを隠すことが出来ていないことを知って、まだまだ修行が足りないな、と思った。
こんなんじゃ好きって気持ちが、本人にバレるのも時間の問題かもしれない。

「うまく言えないんですけど……」

 私は先日の帰り道での事を、潔子先輩に話した。
話し終えるまで潔子先輩は口を挟まずに、黙って私の話を聞いていた。

「…それってさ、東峰、嫉妬したんじゃないの?」

 フェルトを切り終えてハサミを置いた潔子先輩は、私が思いもしなかった言葉を口にした。
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