第16章 応援のカタチ(後編)
「はい、お言葉に甘えたいです!私も先輩と一緒に作りたいなって思っていたので」
「ふふ、良かった」
潔子先輩の笑顔の前を、爽やかな風が吹き抜けていった。
先輩の黒髪がきらきら輝きながらなびいている。
その美しさに思わず目を細めて、私も笑顔を返した。
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「お疲れ様でしたー!」
部活が終わるとすぐに、黒崎は清水とともに体育館を飛び出して行った。
黒崎に今度こそ、この間の失言を謝ろうと思っていた東峰は彼女に向かって伸ばしかけた手をじっと見つめ、ため息をつきながら引っ込めた。
「…スガ…俺本格的に避けられてる気がする…」
「いやぁ、そんなことは…」
「無いこと無いだろ?!見たか?さっきの猛ダッシュ!」
今にも泣きだしそうな東峰に、菅原もつられて苦い顔になる。そんなことないぞ、とフォローしてあげたいところだったが、先ほどの黒崎の姿を見たら、東峰が避けられていると思うのもいたしかたないような気が菅原はしていた。
「あー…でも、ほら、なんか用事があったのかもしれないし…」
「ここんとこずっとあんな感じだぞ…?」
「えーと、毎日、用事があんだよ、きっと……」
菅原が困った顔でそう東峰に返すと、後ろから澤村が話に入ってきた。
「スガ……その言い訳はちょっと苦しいんじゃないか?」
「……やっぱそうかな」
「…!やっぱり俺、避けられてるんだ…!」
「喧嘩でもしたのか?旭」
「う……」
今まで東峰と一緒にいることが多かった黒崎がわき目も振らずに帰宅する姿を見ていた澤村は、菅原ほど黒崎の感情の変化に機敏な方ではなかったが、さすがに様子が変だと思ったらしい。
「その顔は、何か心当たりがあるんだな」
やれやれといった顔で、澤村は額から滴る汗を拭きながら東峰に心当たりを話すように促した。
菅原にも話したように、東峰は事の次第を澤村にも同じように話した。
「…男の嫉妬は見苦しいぞ、旭」
「うっ」
澤村にそう指摘され、東峰は心臓に矢でも刺さったかのように弱りこんでしまった。
傷に塩を塗り込んでいく澤村に、菅原は間に入って「そう言ってやるなよ」と場をとりなす。