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【HQ】恋愛クロニクル【東峰旭】

第15章 応援のカタチ(中編)


 翌日。
朝練を終えて、片づけをしている時に、潔子先輩が駆け寄ってきた。
潔子先輩の目がきらきら輝いていて、私は何事かと潔子先輩の輝く瞳に釘付けになった。

「あのねっ、美咲ちゃん」
「?どうしました、潔子先輩。そんなに息を切らして」
「…私、いい物見つけたの。ちょっと一緒に来て!」
「えっ、は、はい!」

 半ば引きずられるように、潔子先輩に腕を掴まれて先輩の目的の場所まで駆けて行った。
連れてこられたのは倉庫前で、潔子先輩は開いた扉の中から顔を出して、こっちこっちと手招きしている。
そっと覗き込むと、潔子先輩の指さす先に、黒い大きな塊があった。

「なんですか?それ」
「ふふ」

 潔子先輩が美しい笑みを浮かべて、その大きな黒い塊を掴んで中を見せてくれた。
黒地の上に白い文字が浮かんでいるのが目に入った。

「…OB会…?」

 読み取れたのはそこだけで、口にしてみたもののこの黒い塊が何なのか全く検討がつかなかった。

「…??」

 首をかしげる私に、潔子先輩はにっこりと微笑んだ。

「これね、横断幕だよ」
「横断幕……」
「部のスローガンとか、応援の言葉が掲げてあるんだ」
「あ、あぁ…!」

 今まで部活とか熱心にやっていないからちゃんと見たことはないけれど、なんとなくイメージはつく。
けれどそれが潔子先輩があんなに目を輝かせるほどいい物なのかどうかは分からなかった。

「…でも、今までの試合でも使ってるんじゃないですか?」

 私の言葉に潔子先輩は大きく首を横に振った。

「ううん。私、こんなのあるなんて知らなかった」
「えっ、そうなんですか?!じゃあ他の先輩方も…?」
「多分、知らないんじゃないかな。そんな話今まで聞いたことないし。……きっと、これ昔強かった時に使ってたやつだと思う」
「あ……そうなんですね…」

 烏野が、強豪と呼ばれていた時代。
日向が憧れる「小さな巨人」がいた頃、きっとこの横断幕は高々とコートに掲げられていたのだろう。
どういった文言が書かれているのかは分からないが、きっと部員達の士気をあげるに違いない。

「少し、汚れがあるから綺麗にしないとダメだけど……。この間、美咲ちゃんが言ってた、応援、これで出来ないかな」
「!!」

 潔子先輩も、考えてくれていたんだ。
部員達にエールを送る方法を。
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