• テキストサイズ

【HQ】恋愛クロニクル【東峰旭】

第15章 応援のカタチ(中編)


 GW合宿の時に垣間見た、黒崎の知らない顔。
それを知っているのは、俺だけだって、思ってた。

 けれど、夜久は黒崎の過去を知っているという。
黒崎のことを好きなんだと自覚してから、自分の知らない彼女のことを余すことなく知りたいと思うようになっていた。

 でも、合宿のあの夜、少しだけ見せてくれた弱みを、黒崎は無かったもののように振舞っていて。
俺から色々聞き出すのはおかしいし、黒崎が話してくれるまで待つつもりだけど。

 その弱いところを、夜久は知っているんだなって思ったら、胸の奥がちりちりして苦しくなる。

 俺より、夜久と黒崎の方が通じ合っているような気がして、そう思うと悔しいとか妬ましいとかどろどろした感情がとめどなく湧き上がってきてしまう。

 俺だけが、彼女の深いところを知っているんじゃない。
それよりももっと深いところを知っている奴がいる。

 それがよりによって音駒のリベロだなんて。
ありがたくない巡り合わせに、大きくため息をつく。
これがどこの馬の骨とも分からないやつだったら、けちょんけちょんに……は出来ないかもしれないけど、もう少し強気に出られていたんじゃないか、と思う。

 それに、あんなに嬉しそうに夜久と笑い合う姿を見てしまったら、簡単に間に割り込もうなんて、出来ないよ。
黒崎の中で、俺はどのくらいの存在なんだろう。
夜久の方が、彼女の中で大きな割合をしめているんじゃないだろうか。
自分が、ちっぽけな存在に思えてくる。

 もう何回目か分からないため息をついて、俺は玄関の扉を開けたのだった。

 
/ 460ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp