• テキストサイズ

【HQ】恋愛クロニクル【東峰旭】

第15章 応援のカタチ(中編)


 あたふたする私をよそに、電話越しの衛輔くんは「そっか」と小さく言ってそれ以上旭先輩のことで何か言ってくることは無かった。

『あー…変なこと聞いてごめん』
「ううん…」

 衛輔くんの声の調子が、いつもの調子に戻ったように思えてほっとする。

『…じゃあ、帰ったら連絡くれる?昨日の話したいからさ』
「…うん、分かった。じゃあまた後でかけるね」
『おう、待ってる』
「ばいばい」

 電話を切って、旭先輩の方を振り返る。
先輩は手持ち無沙汰だっただろうに、こちらを見てその場にただ静かに佇んでいた。

「すみません、お待たせして」
「いや、いいよ。……電話、音駒の人から?」

 旭先輩の声が少しだけ低くなった気がした。
さっきの衛輔くんのことが頭をよぎり、旭先輩を顔を見るも、先輩は別段鋭い視線にはなっていなかった。

「はい、衛輔くんからでした」

 そう答えた瞬間、ほんの一瞬だったけれど、旭先輩の眉根がギュッと寄ったように見えた。

「…あの、リベロのやつか」
「はい」
「…仲、いいんだな」
「そうですねぇ……。……昔、衛輔くんのお家にお世話になっていたことがあるんです。だから家族じゃないけど、そのくらい距離が近い、ってところはありますね」
「へぇ…そうだったんだ……」

 今日は衛輔くんも旭先輩もどうしたのだろう。
何かお互い名前を聞くと少し不機嫌になるような、そんな気がする。
何故だろう?と思いを巡らせて、ハッとした。

 烏野と音駒は、ライバルなのだ。
この間の練習試合の時も、私はうっかりそれを忘れてしまって衛輔くんと盛り上がってしまったのだった。

 きっと旭先輩はそれで気を悪くしたに違いない。
衛輔くんも、私が烏野の人間というのは分かっていても、ライバル選手の名前を聞いて何か思うところがあったに違いない。

「すみません、ライバル相手なのに…」

 思わず頭を下げていた。
私と衛輔くんの個人的な繋がりは、旭先輩や他の部員には関係のないことだから…私がいくら衛輔くんと旧知の仲だとはいえ、皆がそれを快く受け入れるという事はないのかもしれない。
そう思って、謝罪の言葉を口にしたのだけれど、旭先輩から返ってきたのは意外な言葉だった。

「別にいいんじゃないか。黒崎が試合に出て対戦するわけじゃないんだし」
/ 460ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp