第15章 応援のカタチ(中編)
「…出ないの?電話じゃない?」
旭先輩の話の途中だったから、後でかけなおせばいいかな、なんて思って携帯を放っておいた私に、旭先輩がそう言うものだから、「すみません」と断りを入れて携帯を取り出した。
鞄から取り出した携帯は微かに震えていて、覗き込んだ私の顔を明るく照らした。
画面に表示されていたのは『衛輔くん』の文字。
そういえば昨日、連絡をくれると言ってたっけ。
昨日の今日で衛輔くんが話す内容といったら、多分あの事だろう。
衛輔くんの話が昨日彼に尋ねた『応援の方法』についてだったら、すぐ横にいる旭先輩に聞かれるのはまずい。
そう思うと体は自然と旭先輩に背を向けて、話をなるべく聞かれないように距離をあけて、衛輔くんの電話に出たのだった。
「もしもし?」
『こんばんは、美咲ちゃん。今、電話大丈夫?』
「あ、ごめん。今ちょうど帰り道で」
『そっか。じゃあ歩きながら俺と電話しない?夜道危ないから電話しながら帰った方が安全じゃん?』
「あー、えっとね、今先輩と一緒に帰ってて」
そう答えると、一瞬の沈黙。
続いてさっきまでよりワントーン低い衛輔くんの声が聞こえてきた。
『…先輩?…もう一人の女子マネの人?』
「ううん」
『…誰?』
その衛輔くんの声の調子に少し胸がざわりとした。
電話越しだから顔は見えないはずなのに、鋭い視線を差し向けられたような気がした。
「…あ、旭先輩だよ」
衛輔くんの調子に、思わずどもってしまう。
別に悪いことをしている訳じゃないのに、旭先輩と一緒に帰っているのを咎められたような気になってしまう。
思春期の娘を持つ父親みたいな心情なのかな、衛輔くん。
心配性なところがあるから、きっとそう。
『旭……3番のエースか』
「うん、そうだよ」
『……なぁ美咲ちゃん』
「うん?」
『そいつと…その旭ってやつと、付き合ってんの?』
衛輔くんの言葉が脳の神経をうまく伝わっていかなかったのか、一瞬何を言われたのか分からなかった。
何度か瞬きして、ゆっくりと衛輔くんの言葉が脳内をめぐり始めた。
「えっ?!?いや、違うよ!!?そういうんじゃなくて、ただ家が近所で……」
裏返ってしまった声が、いやに耳についた。
これでは旭先輩のことを特別に意識してるって、衛輔くんにバレてしまいそう。