第15章 応援のカタチ(中編)
インターハイ予選の組み合わせが発表されてからというもの、部員達は皆ますます練習に力を入れているようだった。
部活が終わった後も、自主練をする人が増えている。
そんな部員達の力になりたくて、私も自主練に付き合って居残ることが多くなった。
GW合宿の時から母とは気まずくなってしまっていて、家に帰るのも億劫だったから、渡りに船とばかりに居残っていたところもあるけれど。
「おーい、そろそろ閉めるよー」
いまだ明かりの消えていない体育館に、用務員の先生がひょっこり顔を出した。
まだ練習したりない顔をしている人ばかりだったけれど、用務員の先生に急かされて、皆仕方なく片付けを始め出す。
私も慌ててモップを取り出してきてモップ掛けしてまわった。
「おつかれー」
「寄り道せず早く帰れよー」
自主練に残っていたメンバーで連れ立って帰るも、それぞれの家路へと別れていき、私はまた旭先輩と共に家まで帰ることになった。
「みんな気合入ってますね、最近特に。自主練する人も増えましたし」
「そうだなぁ。……俺達3年にとっては最後のインターハイだしな」
「…そう、ですね……最後、かぁ」
『最後』
その言葉を聞いただけで、胸がざわついて苦しくなった。
来年はもう旭先輩はいないんだと、改めて認識させられた気がする。
一緒にこうやって過ごせる時間は、あとどれくらいなんだろう。
急に物悲しくなって、それ以上言葉が出てこず私は俯いてしまった。
「…あっ、ごめん!しんみりさせちゃったな」
「……『最後』って言われると、なんだか寂しくなりますね…」
「黒崎……」
「いつまでも先輩達と一緒に部活出来たらいいのにって、思っちゃいます」
「そうだなぁ…俺もずっとみんなとバレーやってられたらなって思うよ」
旭先輩はとっぷりと暮れてしまった夜空に浮かぶ丸い月を見上げながらそう言った。
なんだかセンチメンタルな気分だ。
旭先輩の視線が月から私へと動いた。
横顔をじぃっと見つめていたから、旭先輩と目がばっちり合ってしまって少し恥ずかしくなった。
「黒崎とはまだ付き合い短いけどさ、不思議と…」
旭先輩の言葉の途中で、鞄から着信音が鳴り響きだした。
言いかけた言葉を飲み込んでしまった旭先輩は、ぱちぱちと瞬きをしてくぐもった音の鳴り響く私の鞄に視線を移す。