第14章 応援のカタチ(前編)
「あーもう、お前らうるせー!」
収集のつかなくなった部室の喧噪に、黒尾が叫ぶと少しだけ後輩達は静かになった。
研磨の「クロもうるさい…」の一言がよく聞こえるくらいには。
「応援されるなら、どんな形でも嬉しいものだと思うけどな」
「あ、やっぱり海もそう思う?だよなぁ、応援してくれるその気持ち自体が嬉しいよな」
それまで静かに横で話を聞いていた海が、自分と同じ考えを口にしたものだから、思わず頷いた。
「でも、それじゃダメなんだろ?具体的な事教えてほしくて、やっくんに聞いてきたんだろうし」
「……おう、そうだよ」
なんでこういうとこだけちゃんとツッコんでくるんだよ黒尾のヤツ、なんてちょっと思う。
「そんでもって、愛しの烏野マネちゃんに聞かれたのにうまい答えが思いつかなくて俺らに助けを求めたんだろ」
「おっまえほんといっつも一言余計なんだよ!」
「まぁまぁ」
黒尾に掴みかかろうと思ったら、海が俺と黒尾の間に入って場をおさめようとしてきた。
それ以上黒尾に突っかかるのも面倒になって、海に免じて身を引くことにする。
「まー、やっぱりリエーフの言ってた手作りの小物渡すのがスタンダードなんじゃねーか?烏野の連中なら喜びそうだけどな、そういうの。…あ、1人あの眼鏡君はどうか分かんないけど」
意外にも黒尾が真っ当に答えをくれて、思わず目を丸くしてしまう。
そんな俺の顔を見て黒尾は「せっかく真面目に答えてやったのにそんな顔すんなよ」と口を尖らせた。
「…サンキュー。色々意見聞けて参考になったわ」
なんとか美咲ちゃんに昨日の返事が出来そうだ。
ホッと一安心した俺に、黒尾がまたからかうように話を始めた。
「お前も大変だな。遠距離だし、7、8年のブランクあるし。つーかもう烏野の誰かと付き合ってっかもしれねぇぞ?」
「だから、あいつとはそういうんじゃねぇって言ってるだろ」
「7、8年ぶりに会って放っておけないってのは、確実に『恋』だと思うけどね~」
「もうなんとでも言っとけ!」
違う、と必死になって否定すればするほど、黒尾はそれを肯定だと認めるような気がして俺は口をつぐむことにした。
けれど本当は、自分のためでもあった。
恋心を否定すればするほど、俺はそれを意識せざるを得なくなっていたから。