第14章 応援のカタチ(前編)
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翌日、朝練が終わって部室で着替えている時に、俺は美咲ちゃんからの昨日の質問を同じバレー部の仲間にぶつけることにした。
「なぁ、もしうちに女子マネがいたとしてさ」
そう切り出した俺に、山本が物凄い形相で食いついてくる。
こいつに女子マネの話は厳禁だったかもしれない、と思うも今更遅い。
「な、な、な、夜久さん、アテがあるんすか?!とうとうウチにも女子マネがくるんですか?!?!」
「いや、違くて。人の話はちゃんと最後まで聞けよ」
山本の望みを一刀両断すると、山本は一気に勢いをなくしてしおれた植物みたいになった。
相手にすると面倒くさいから放っておいて、話を続けた。
「女子マネにさ、大会前にどういう励ましとか応援されたら嬉しい?」
「なぁに、やっくん。それは烏野マネちゃんからの質問ですかぁ?」
いやーな笑みを浮かべて黒尾がこちらを見てそう言うものだから、俺の顔も自然と黒尾を威嚇するような顔になる。
「あーそうだよ!悪いか!」
「いいえ~?ぜんっぜん悪くないですぅ~」
「黒尾、一回殴らせろ。その顔と声、ムカつく!」
「暴力反対~」
掴みかかって本当に一発殴ってやろうかと思った時、後輩のリエーフが「はいはーい!」と手をあげた。
「マネ手作りのストラップとかミサンガとかもらいたいです!バスケ部の友達がそういうのもらってて」
「あ、俺も!」
朗らかにそう言うリエーフに犬岡が同意の声を上げる。
その横で、研磨が露骨に嫌そうな顔をした。
「?研磨はそういうの、嫌いなのか?」
問いかけると、まさか自分に話が振られるとは思っていなかったのか、研磨は一瞬ビックリした顔をした。
じっと見つめる俺の視線を受けて、答えないわけにはいかないと思ったのか、研磨はしばらく沈黙した後、口を開いた。
「…なんか、念がこもってそうでヤダ」
「なんでですか!いいじゃないですか、念!『頑張って☆』っていう念でしょ?!」
「……そういうの、なんか重い」
研磨の言葉に、リエーフはギャーギャーとわめいていた。
研磨さんは分かってない、とかなんとか。
それに混じって山本が同意の声を上げだして、部室は一気にやかましくなった。