第14章 応援のカタチ(前編)
あの旭先輩の力強いスパイクをブロックしてしまう伊達工とは、一体どんな学校なのだろうか。
『鉄壁』という異名からして、ブロックが上手なチームなのだろうが、いまだ他校との試合は音駒戦しか見たことのない私にとって、想像するのはなかなか難しかった。
なんとなく、長身の選手がたくさんいそうな、そんな感じはした。
「…何か、私達で力になれることって無いですかね…」
「うーん……」
普段から、部員全員が力を発揮できるように、色々気を遣っているつもりではある。
けれどこういった大きな大会の前には、何かもっと部員の気持ちを高められるような『特別な何か』はないだろうか。
順調に試合に勝ち進めば、伊達工とも当たるかもしれない。
ただでさえ1つも落とせない試合なのに、旭先輩達はトラウマの相手と戦うのだ。
「私、そういう励ましとか、得意じゃなくて……今すぐには思いつかないかな」
「私もこういう経験ないので全く思いつかないです…」
「……」
「……」
外から菅原先輩に「2人とも帰んないの?」と声をかけられるまで、潔子先輩と2人、押し黙ったままだった。
これといった案を思いつかず、家路に着く。
今日も家まで旭先輩は送ってくれたけれど、まさか本人にどんな応援をされたいか聞くわけにもいかず、他愛のない話をして別れを告げた。
自室で着替えを済ませて、今日出された課題に手をつけようかと鞄から教科書とノートを取り出す。
一緒に飛び出てきたスマホがチカチカと光っているのに気が付いて、手に取る。
画面に浮かび上がったのは、衛輔くんからのラインだった。
『元気かー?そっちはもうインハイ組み合わせ出た?』
衛輔くんのラインはいっつも『元気かー?』の一言から始まる。
あの練習試合の日から、ほぼ毎日のようにやり取りしているのに、毎回『元気か?』と衛輔くんは送ってくるのだ。
理由を尋ねたら、衛輔くん曰く、音信不通だった期間が長すぎてどうしても元気かどうか気になるらしい。
私の体調を気に掛ける衛輔くんは、いつまで経っても昔の『やくのおにいちゃん』のままだな、なんて思う。
体調を崩しがちだった幼少期の自分を心配そうに見つめる衛輔くんの顔はいまでも忘れられない。
『元気だよ!今日組み合わせ発表だった。どうも因縁の相手と当たりそう』