第14章 応援のカタチ(前編)
音駒との練習試合から1週間と少し過ぎた頃、待ちに待ったインターハイ予選の組み合わせが発表された。
烏野と同じAブロックには「伊達工業」と「青葉城西」という強いチームがいるらしい。
どちらも烏養コーチが要注意だと言っていた学校だ。
衛輔くんのいる音駒とインターハイで当たるには、まず宮城で優勝しないといけないらしい。
1つでも負ければ、そこで終わりなのだという。
それを聞いて、なんとなく気持ちが重く沈んでしまう。
試合に出るわけでもない自分がこんな風に思うのだから、実際に戦う選手達はどんな気持ちなのだろうか。
烏養コーチが今回の試合で気になる学校について、それぞれ解説するのを聞きながら、バレー部員達に視線をうつす。
「―…伊達工には確か、今年3月の県民大会で2-0で負けてるな」
その言葉に、旭先輩の顔が曇ったように見えた。
旭先輩の横にいる菅原先輩も、西谷先輩も、どこか表情が固くなっているような気がする。
3月の試合…烏養コーチの言葉を思い返して、以前旭先輩から聞いた『部を離れたきっかけ』の試合も3月頃の話だったことを思い出した。
もしかしたら、その伊達工との試合が、旭先輩が心折れてしまった試合なのかもしれない。
気になった私は、ミーティングが終わると潔子先輩に記録ノートのありかを尋ね、記録を確認することにした。
背表紙に書かれた年月日をたどり、伊達工との試合の記録が書かれたノートを手に取る。
中を確認すると、確かに県民大会での記録もあった。
「あ……」
旭先輩の名も載っている。試合に出ていたのは間違いない。
記録を詳しく追っていくと、旭先輩のスパイクミスが続いて記載されていた。
そのスパイクミスのほとんどは、「ブロック」によるものだという記載もあった。
「……やっぱり、この伊達工との試合で……」
「何を調べてるのかと思ったら…」
声に振り返ると、潔子先輩が苦笑しながらこちらを見つめていた。
潔子先輩は静かに私の横にやってきて、手元のノートに目を落とした。
「美咲ちゃんの推察通り、この試合の後、東峰は一時部を離れてたの」
「やっぱりそうだったんですね…さっきの先輩達の表情、変だったから」
「因縁の相手だね、特に東峰にとっては」
「ですね……」