第1章 一枚のビラ
そんなことを誰かに言ったのは初めてだった。
心からの賞賛なんて、そうそうあるものじゃない。
それも、こんなに自然に言葉が内から出てくることなんて。
ここが体育館で、周りには他の部員がいることも忘れて、私は旭先輩に賞賛の声を送った。
「えっ、あっ、ありがとう」
「旭さーん照れすぎっすよ」
茶化すように田中先輩が旭先輩に声をかける。
後頭部をかきながら、恥ずかしそうに旭先輩が笑った。
さっきのボールを打った瞬間の気迫は凄まじかった。
なのに、今はこんなに柔らかい雰囲気で、どこかふにゃふにゃした感じがする。
あんな顔をするなんて普段の感じからは全く予想できない。
多分、さっきのあの一瞬で。
私は恋に落ちていたんだと思う。
あのボールが打ち抜いたのは、私の心だった。