第3章 一学期
章ちゃんに朝課外の課題を渡して、ついでに他の教科は?と聞くと、「あ、あ~…」と後ろ頭をかきながら目を逸らしたのでもうカバンごと章ちゃんに貸した。
「ほんまごめんなあ」
「いーよ」
洗面台に向かい、歯磨きをする。
普段は結構歯磨きしながらウロウロしたりするんだけど今は章ちゃんがいるからしない。
歯磨きをしながらぼんやりと、
章ちゃんバイトで課題する時間なかったんだろーなー、ほんとはあんまり本人のためにならないけど出来るだけわたしがしっかり予習とかして、課題もして、章ちゃんに見せれるような状態にしといたら少しは章ちゃんも楽になるかなぁなんて考える。
歯磨きをして戻ってもまだ章ちゃんはわたしのノートやらを広げていた。
「あ、字、読める?」
「おん!全然よゆ~……しーちゃん、あんまし字ぃ変わらんね」
一生懸命動かしてた右手を一瞬止めて、こちらをちらりと見上げる仕草がかっこいい…でも可愛い…。
「…それは良い意味で?」
「おんwなんかな〜幼く見えるんやけど読みやすいねん」
「幼く見える?!」
「なんて言うんかなぁ……ん~〜まぁでもおれが好きな字ってこと!」
にへら、と顔を上げ、脱力したように笑うから、心臓がきゅん、てなった。
「……ありがと」
「いーえ!こちらこそ」
章ちゃんは、ふふふ~と笑ってまた右手を動かし始めた。
「じゃあ、行ってきま〜す」
「行ってきま〜す!」
「はーい、行ってらっしゃい」
2人でお母さんに行ってきますと言って、私の家を出た。
「ごめんなぁ…写させてもろて…」
「ううん。終わんなかった分は学校でね。」
「ほんま____」
「ありがとう、がいいな?」
「…ありがとお」
ごめんね、より
ありがとうって言ってもらった方が気持ちも明るくなるし、きっとどっちの気持ちも軽くなるはず。
章ちゃんとは「ありがとう」がいっぱい言える仲でいたいし、わたしにとって、ひまわりと太陽の子である章ちゃんがわたしにたくさん謝るのはなんか心地よくない。
ひまわりが下を向くような、太陽が雲に隠されてしまうような。
そんな感じ。