第3章 一学期
「あふ……」
わたしたちの前の席に座った兎希から欠伸が聞こえた。
「兎希は課題とか予習、終わった?」
眠気覚ましにでも、と思って話しかけると、「んん…」とまだ眠気を噛み殺してるような声とともに兎希が振り返った。
兎希「もちろん終わらせてます~〜…古典の予習に関しては訳をネットで調べてそれに付け加えてったぁ」
「あ、やっぱり?」
安「え、ネットで出てくるもんなんや?」
「うん。意外とね。それでも足りないとことかあるから足りないとこがどこか探したりしてね」
安「はわぁ、なるほどぉ」
章ちゃんが「なるほどなるほどぉ」と頷く。
兎希「その感じだとさてはヤッさん、課題とか予習、してないんやないのー?」
安「んーふふふ。しーちゃんに貸してもらう」
そう言って、兎希にピースを向け、わたしの方を見て嬉しそうに笑った。
兎希「雫~、ヤッさんのこと甘やかしすぎじゃない??」
「う…いつもって訳じゃないからいーの…」
安「おれかてあかんなーって思うてんやで?」
兎希「まぁとりあえず授業こなして最終的にテスト前にまた勉強じゃない?」
「章ちゃん、授業中寝ないようにね?」
安「ん〜~約束はでけんかもぉ」
「もお……」
靴箱で丸山くんに会った。
丸「オハヨオ!」
安「丸〜おはよぉ」
兎希「おはよ、丸ちゃん」
「お、おはよ、丸山くん」
わたしと兎希が挨拶をすると、丸山くんがプルプルと縦に震えた。
「?」
丸「ん~〜~!朝から可愛い女の子におはよって言ってもらえて丸ちゃんうれし〜~〜!!!」
きゃー!と自分のほっぺを押さえ、ぐねんぐねんと動いた。
…朝から元気だなぁ…!
その様子を見て、章ちゃんが「丸…」とちょっと呆れた笑い方をしていた。
そのまま丸山くんも隣のクラスだし、ということで一緒に教室に向かう。
並びはもちろん、前に兎希と丸山くん。
その後ろにわたしと章ちゃん。
「章ちゃんと丸山くんも友達だったんだよね?」
「おん。よこちょから広がってった感じやなぁ。あと信ちゃん。あっこもご近所さんたちやから」