第2章 オリエンテーション
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ポワポワとおでこ辺りに温かさを感じた。
ふわりと、意識が浮かんで、目をゆっくりと開ける。
「…?」
なんか……
顔…濡れてる…?
「あ、ごめん、濡らしてもうた」
その声とともに、
ぐりぐりと顔にタオルを押し付けられた。
「うーーーー」
「わははは〜」
「やめて〜」
ぶにんぶにん頬を揺らす手に自分の手を添える。
「もお」
「ごめんごめん。しーちゃん、足、寒ない?」
章ちゃんがわたしの顔を拭くのをやめて、自分の頭を拭きながら言った。
足を見られてるのが恥ずかしくなって隠そうとしたけど隠れなかった。
「…寒い…けど、部屋着で良いのなくて」
そう返すと少し考えるような仕草をして「あ」と章ちゃんが言った。
「おれのあげるわ」
「え?」
「スウェットばっか買いすぎて余ってんねん。もうサラやないんやけどそれでも良ければあげるで?」
「ほんと?」
「おん」
章ちゃんの、おさがり…!
「でも貰っちゃって良いの?」
「ええよええよ」
待ってて、とリビングから姿を消すとすぐに戻ってきた。
多分ほとんど自分しかいないから洗面場に自分の着替え置いてるんだろうな。
「ほい」
「ありがと」
「着替えてきてええで。おれこっちでドライヤーしてるから」
「…ん、わかった」
スウェットと一緒にドライヤーも持ってきてたようで、手にドライヤーを持っていた。
(わ、)
身長、あんまし変わんないと思ってたけど、
ウエストはブカブカだし、
裾もダルダルだった。
(男の子、だからかなぁ)
ウエストの部分は紐をぐっと縛って結んだ。
裾はゴムになってたけどそのゴムの部分が足首で引っかかってくれないからクルクルとおった。
「章ちゃ_____」
ブオーー、とドライヤーに吹かれる章ちゃんのパーマが緩くかかった金色の髪がなびく。
ふわふわと
ふわふわと。
柔らかそうに、
なびく。
「…?しーちゃん??」
「え?あ、ごめん!」
触ってた。
ふわふわとなびく金色の髪の毛を思わず触ってた。