第2章 オリエンテーション
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自分の家の扉を開けると、案の定誰もいなかった。
はぁ、と安堵とも落胆ともとれないようなため息をつく。
時々、何の連絡もなしに帰ってきてたりする。
まぁ、おってもおらんでもええねんけど。
今からしーちゃん来るから、今日はおらんくて良かったってとこかな。
リビングに入ると、オリエンテーション行く前と少しだけ様子が違ったような気がした。
台所を見るとシンクが濡れてた。
…きっと両親がいっぺん帰ってきて、また出てったんやろな。
荷物を適当に放り出して、ザッと掃除機をかけた。
掃除機をかけたあと、シャワーを浴びに風呂場に向かう。
そういえば、前、上がったくらいにしーちゃんと出くわしたなぁと思いながら服を脱ぐ。
そして洗面台の鏡で自分の体を見る。
あんな風にしーちゃんがおれの体を見ることがあった時に恥ずかしい体型じゃないかどうかの確認。
腹筋はやっぱし割れてないと。
マルあたりはちょっとお腹出てるんとちゃうかな。
あの人、自分の体に甘いから。
ザァーーー
シャワーの音に隠れて玄関が開いた音がした気がした。
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章ちゃんの家に入ると、章ちゃんの匂いに包まれた気がした。
シャワーの音が聞こえるからまだ上がってこないとは思うけど…
足早にリビングに向かった。
ソファに座ると、自分の家でもないのに落ち着いた。
背もたれに寄りかかると思った以上に疲れていたのか、欠伸がこぼれる。
(ベッド、固くはなかったし、寝心地も悪くなかったんだけど…。やっぱり自分のベッドじゃないとちゃんと疲れはとれないんだなぁ)
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「しーちゃん、ごめ〜ん。お待たせえ」
ガシガシと頭を拭きながらリビングに戻ると、ソファでしーちゃんが寝てた。
ソファの背もたれに身を任せ、ぽけぇ、と口を半開きにして寝てる。
ほんまあほっ面よなぁ…可愛ええなぁ…
気ィ許しすぎやろ…。
寝てるのを確認して、数センチの距離まで顔を近づけた。
あとちょっとで唇。
(さすがに、唇にしたらあかんよなぁ)