第1章 わたしの
渋谷くんは、見た目が…その…不良そうというか…
眼力のせいで少しいかつい印象があるから、
「行かへんわ」なんて言うかもって思ってたんだけどそんなことは無かった。(もし言い出したらわたしが兎希と一緒に行くつもりだった)
「しぶやん、少しは真面目なんやで?
…自分の興味があることとかは特に。他はだらーってしてるけど」
ふふふ、と章ちゃんが笑う。
ほんとに章ちゃんはいつも笑顔だなぁ…。
「でも渋谷くんと知り合いだなんて知らなかったよ」
あんなキリッとした顔つきの男の子、一度会ったら忘れられそうにないし。
「せやねぇ…遊ぶ時とかはしぶやんとかよこちょの家の方に行くことが多かったからやなぁ、多分。」
なるほど…
会う確率自体、少なかったわけね…
「渋谷くんもギター弾くんでしょ?」
「おん!むっちゃ巧いで!!同い年とは思えへんくらいやねん」
章ちゃんが嬉しそうに話すから、わたしまで何だか嬉しくなる。
章ちゃんは人を笑顔にするのが上手だと思う。
「あっ、そうだ。
渋谷くんってどんな子が好きなのかな?」
「なしていきなしそんなん聞くん」
何故か章ちゃんの声のトーンが下がる。
「うん?
兎希が渋谷くんに見惚れてた気がしたから、もしかしたらって思って…」
お節介かもしれないけど、いつもというか今まで何回も章ちゃんのことで兎希には相談に乗ってもらってたし、
何より、あの子が同年代の子に興味が湧く…というか気になるっていうこと自体が珍しいから何かきっかけでもって…
思ったんだけど…
「何やぁ~、そっちか~!
兎希ちゃんの方か~…。びっくりしたわあ
しーちゃんがしぶやんのこと、気になってんのか思うたやんかあ」
はわ~、と章ちゃんが息をつく。
…その言い方は紛らわしいよ、章ちゃん。
まるでわたしが渋谷くんのこと気になってたら嫌だ、みたいな…。
いや、わたしの考えすぎか。自惚れだ。
「まぁ、でもどんな子だろうとは思うよー。
章ちゃんの友達だし、クラスメイトだし?」
ギターもどれほど凄いのか気になる。
だってあの章ちゃんが言うんだもん。
「そっかそっか~。あっ!でもあんまし近づかんといてな?しぶやん、すぐ手ぇ出すから」
手ぇ出す?