第1章 わたしの
「こういうこと?」
すっ、といきなししーちゃんがおれの頭を撫でた。
「?!」
思わず、びくっ、としてしまう。
「ちゃ、ちゃうわ!!」
「ぷっ
章ちゃん、顔真っ赤~」
しーちゃんが笑う。
ほんま、こういう不意打ちすんねん、しーちゃんは。
赤いのを誤魔化したくて、
しーちゃんのほっぺたをつまむ。
「あいたたたたっ」
教室につくと、意外にもクラスの半分くらいしか生徒が戻ってきていなかった。
多分混雑に巻き込まれているんだろう。
「やっぱり横山くんはまだだね。」
しーちゃんが席に座る。
その横におれも座る。
自由席で良かったと思う。
これならいつでもしーちゃんと話せるし、他の男子がしーちゃんに話しかける機会が全くとまではいかへんけど少しは減る。
「すごくこの学校、自由だね」
しーちゃんがこっちを向く。
あぁ
この感じ、新鮮やなぁ…
同じ教室で、隣の席。
今までになかった光景。
違うクラスに遊びに来たんやなくて、同じクラス。
新鮮や
「そやねえ~
勉強した甲斐があったわ〜」
自分では何も意識してへんし、そんなに自覚があるわけでもないんやけど、皆から「頭に花が咲いてる」とか言われる。
そんなおれでもこの進学校に入れたんはしーちゃんと兎希ちゃんのおかげでもあんねん。
もちろん塾にも行ったんやけど、それでも足りない分とかはしーちゃんと兎希ちゃんにそれぞれ、得意な教科を教えてもらった。
それでなんとか合格。
この学校が良かったわけやなくて、しーちゃんが受けるって言うたから。
適当に理由をつけて、ここを志望した。
まぁ、思いの外、よこちょとかしぶやんとか、いろいろ知り合いがおったんは少しびっくりしたけど。
「あっ!いたー!安田くん!!」
いきなり名前を呼ばれ、びっくりしながらも教室の入口を見ると、同じ中学だった女子がいた。
(あの子、うざいんよなぁ…)
うるさいし、えらいベタベタ触ってくるし。
正直、あまり、いや、全く関わりたくない。