第2章 オリエンテーション
安「ほんならまた来週〜」
ばいばーい、と電車組に章ちゃんが手を振る。
それに対して手を振られた側も手を振り返す。
改めて、章ちゃんの交友関係の広さを実感するなぁ。わたしとは大違いだ。
隣の兎希も何だかんだ言って横山くんや丸山くんに向けてか、手を振っている。きっとあの二人が親しみやすいっていうのもあると思うけど、兎希も受け身がちでありながらも話しかけられて「この人は大丈夫」って思えば懐く感じがあるから仲良くなれるんだろうな。
…わたしはどうだろう。
別にここで手を振ってもいいとは思うけど、わたしが手を振ったら振り返してくれるのかな。兎希ほどあっちの4人と仲がいい訳でもないのに。
けど3人の中で1人だけ手を振ってないからか、すごく丸山くんが「緋刈さーーーーーん!!!!」と言いながら手を大振りしてくれている。
それに返さないわけにはいかない。
あそこまでの大振りは出来ないけど、小さく振り返すくらいなら出来る。
ひらひらと手を振ると満足したように丸山くんが腕を上げて大きく丸を作った。
「合格ーーー!」と丸山くんが叫んでる。
「ふふっ」
兎希「なんの合格だろねw」
「ねw」
安「あいつ女の子に手ぇ振ってもろていい気になってるわ」
「あ、そうなんだ」
安「ほな、バス来るし行こか」
「うん」
渋谷くんに「行くで」とでも言われるように引っ張られていく丸山くんを見送り、わたしたちもバス停に向かった。
「空いてて良かったね」
兎希「混んでたら重たいし周りに申し訳なかったね」
「ふぅ、」と兎希が息をつく。
大荷物は混雑時にはとても申し訳ない。大荷物分、場所を取っちゃうからね。
安「あ、しーちゃん、ドラマ溜まっとるで」
「あっ!そうだった!」
兎希「ドラマ?」
「うん。家のテレビじゃもう容量いっぱいで。章ちゃんの家だとDVDに落とせるデッキがあるからね、そっちで録ってもらってるの」
兎希「なるほど」
安「荷物置いたらこっち来る?」
「うん、そうする!ご飯は?こっちでいい?」
安「おん、頼むわ」
「ん」
お母さんに今のうちに章ちゃんがご飯の時来るとメッセージを送る。