第2章 オリエンテーション
兎希「こ、これは……?」
渋谷くんの前に広がる一種類のデザートの膨大な量に兎希が困惑している。
渋「どや?」
渋谷くんが不敵な笑いをする。
渋「俺のせいで食われへんやったやろ?せやからこれでもかってくらい取ってきたったわ」
つまり、渋谷くん的には、小鍋の時に一応は返したけど、あの時のデザートはみんな一緒だったから兎希も味を知ってはいたけど、このデザートは全く食べれてないからあの小鍋のデザートじゃ返したことにはならないってことらしい。
…律儀だね、意外と。
そして気にはなってなんだけど、触れてなかった渋谷くんの髪型。
あの髪を括ってるゴムは兎希のものらしく、それのお礼も兼ねてるらしい。
律儀だ、律儀だね……!
これが渋谷くんの性格なのか、兎希に対してだけなのかは測りかねるけど、これはいい兆候じゃないかな??
兎希にとってはいい刺激。
少しは恋愛というものに興味を持ってもらわないと。
わたしばっかり相談してて不公平な気がするというか、どうせなら兎希のそういう話も聞きたいというのが正直な話。
今までそういうこと全然話に出してこなかったし。
横「すばる、いっちゃん先にこれ取ってきてん「食え!」」
横山くんにバラされて恥ずかしかったのか、照れ隠しのようによく通る声で渋谷くんが言った。
「ありがとう」と返す兎希が嬉しそうに見えた。
その嬉しそうな表情は食べれなかったデザートが食べれるからか、それとも渋谷くんがそうしてくれたことに対してなのか。
あとで聞いてみよっと♪
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朝食を終えて、部屋に戻る途中______
「ねねねねね、」
兎希「『ね』が多い」
「もうっ、いいからそれは!食べれなかったデザートが食べれるから嬉しかったのか、渋谷くんがああいう事してくれたから嬉しかったの、どっち??」
兎希「いきなり何〜??」
そう言いながら、詰め寄ったわたしから逃げるように仰け反った兎希の顔はまた嬉しそうだった。
兎希「どっちも、かなぁ??」
部屋に着いて片すためにも手を動かしながら喋る。