第2章 オリエンテーション
兎希がわたしに「厳しい…厳しいよう…」と嘆く横を、渋谷くんが「ほんなら兎村さんが犠牲として捕まってる間に俺がデザート取ってこよ」と言って過ぎて行った。
ん?
「俺が」??
「俺は」じゃなくて??
渋谷くんの言葉に少しの違和感を感じつつもスルーした。
兎希「ちょっと!止めなくていいんですか、食事係!!」
「わたしは兎希の食生活を心配してるので渋谷くんのは良いのです」
渋谷くんのこと、よく知らないし、兎希ほど渋谷くんと絡んでないし。
「えええええ……ありがとう……」
安「そこはありがとうなんや」
まだ章ちゃんがいるとは思わなかったからびっくりしたけど、兎希の反応が面白くてつい笑った。
そこからはほんとに兎希の傍にずっとついて、デザートコーナーに行こうとする度に身を呈して阻止した。
ほんとにちゃんと食べないと貧血なっちゃうし。
兎希、わたしのこと心配する前に自分のことも考えるべきだと思う。
兎希「や、やっとデザート…」
兎希にちゃんと朝ごはんになるものを選ばせてから一緒にデザートコーナーに来た。
大体種類は一緒のようで、「あ、これ食べたなぁ」というのも見つけた。
兎希「あ…アレない…」
しゅん、と兎希が落ち込む。
「アレって?」
兎希「一日目に渋谷くんにあげたデザート…あんまし種類変わんないからあるかなーって思ったんだけど……ないのかなくなったのか…」
「わ、ごめんね、」
わたしがデザート最後にさせたから無くなっちゃったのかも、と申し訳ない気持ちになった。
兎希「やや!いいの!他のデザートはあるし。元からなかったのかも知んないし!」
兎希はそう言って笑顔を作ったけど、戻る姿はがっかりしてるのが分かった。
代わりに好きなだけ持っていこうね、わたしのお盆にも乗せていいから、と一緒にデザートを持ってテーブルに戻った。
テーブルにはもう男の子組は戻ってきていて、その渋谷くんのプレートには信じ難い光景が広がっていた。
──────道理で無いわけだよ。。。