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青い春【KJ∞】

第2章 オリエンテーション



「章ちゃ、」




章ちゃんの顔が見えて声をかけようとした。



けど、少しだけ、章ちゃんにかぶってる生徒の頭が退けて見えたのは、他の女の子と喋ってる姿だった。




当たり前だけど、わたしだけじゃない。
わたしじゃない女の子にだって章ちゃんは笑う。
当たり前なのに。




太陽は誰にだってあったかい。



知ってるのに、何度でも心は嫌な音を立てる。




「あ、しーちゃん」



やっぱり、さっきのわたしの言葉は届いていなかったらしく、「あ」と章ちゃんが気づいて声をかけてくれた。
語尾に音符でもつきそうな声音で。

その様子に、わたしへの呼び方に、章ちゃんと喋ってた女の子の視線がきつかった。



怖々と呼んでくれた章ちゃんに近づく。


「…安田くん、ごめん、待たせて…」



『章ちゃん』と、呼べなかった。



『安田くん、』という呼び方に章ちゃんが顔を傾けた。



その間に女の子は「じゃあね」と言って離れて行った。



「どうしたん…?安田くん、て」



覗き込むような仕草に、思わず体を後ろに反らした。



「あ、うん……あの、他の子もいたし…高校生になっても『章ちゃん』ておかしいかなって…」



嘘をついた。



思ってない。
『章ちゃん』って呼び方がおかしいなんて、思ってない。
むしろ自分だけ特別な気がしてる。




「おかしいかなぁ…おれもおかしいんかな、じゃあ。しーちゃんって呼ばんがええ?」



気のせいだろうか
章ちゃんの言い方が、少しだけ、いつもよりきつかった。
本当にきつかったのか、
わたしの気持ち的な問題できつく感じたのか。



「う、ううん、章ちゃん、が呼びやすいならいいの」


そういえば、係会のあと、クラスの男の子と喋ってた時、章ちゃん、『雫』って呼んでたなぁ……



本当に時々、章ちゃんは『雫』って呼ぶ。
幼なじみだから『章ちゃん』って呼んでて、でもさっきみたいに、他の子がいたりするときは『安田くん』って呼ぶことがある。




じゃあ章ちゃんの、『しーちゃん』と『雫』の違いって、何…?








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