第2章 オリエンテーション
「なぁ、なしてヤスはあいつらに怒らんやったん」
渋やんが眉を寄せて聞いてきた。
「あんなん、最初っから相手にする価値もないわ」
笑う。
何を感じ取ったのか、渋やんとよこちょが引き攣ったような笑い方をしていた。
けど渋やんはどこか一点を見つめてると思うと、
小さく、「意味わからへんわ」と言って布団に潜り込んで行った。
よこちょは「いやぁ…流石やな、ヤス」と苦笑いをしながら褒めてるのかわからない言葉を残して布団に潜って行った。
渋やんが、自分のことをヤリ放題の奴と言われて怒ったんか、兎希ちゃんやしーちゃんのことを言われたから怒ったんかは知らんけど、まさか殴りかかるとは思ってへんやったからびっくりはした。
おれがあいつらに怒らんやったんは、『こういうヤツらやで』ってしーちゃんに言えば、しーちゃんはおれを信じて『近づかんどこ』って簡単に思ってくれることを知ってるからや。
そこら辺の男より、女より、しーちゃんはおれを信じてくれる。
せやったら、おれはあいつらのことである事ない事をしーちゃんに吹き込めばええねん。
今までやってそうしてきた。
普通なら「なんでそんな事言うん」「人の悪いことばっか言うて」って言われそうなもんやけど、幸い、今のとこそういったことは言われてへん。
2人とも布団に潜り込んでもうたし、ギターももちろん持ってこれてへんから、仕方なく、俺も布団に潜り込んだ。
____しーちゃんももう、寝たやろか_____
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二度寝をかました後でも、学校側による放送で問題なく起きれた。
いや、起こされたに近いかも。(ありえることではないけどこれが一人部屋とかだったら確実にわたしだけ寝坊してた)
制服に手早く着替えて、歯磨きをして、髪をとく。
食事係の最後の仕事、と言いたいところだけど、一応バスの中でのお昼ご飯のこともあるから最後ではない食事係の仕事に向かう。
「じゃあ先に行ってるね」
「あいよ~」
わたしより寝起きが良くて、同じく着替え終わっている兎希にそう声をかけて、部屋を出た。