第2章 オリエンテーション
「章ちゃんも教えてくれなさそうだし、考えても分かんないからもーいんじゃない?寝よ寝よ」
朝は学生部屋だけに流れる放送で起こされるけど念のため自分のケータイでもアラームをかけ、ばふん、と後ろに倒れベッドに体を沈めた。
兎希「雫って時々そういうとこあるよね」
隣でわたしの倒れるのを見た兎希も姿勢は崩さずそのまま後ろに倒れた。
「そういうとこって?」
兎希「もーいいや!ってなるとこ。普段は結構とことん考えるけど時々まぁいっか!ってなるよね。やっさんのことではなんないけどw」
「う、ううるさいよ」
知ってる!
自分でもわかってる。
章ちゃんのことでは『まぁいっか』なんてならないよ。なれるわけないじゃん!
自分の気持ちに気づいてからはもう尚更『まぁいっか』なんてならなくなったよ。
だって一つ一つ気になっちゃうもん。
まだ『幼馴染みだから』で済まさせれてた頃の方が『まぁいっか』って終われてた。
こう言ったらこう返ってきた
どういう思いでこう返してきたのか、とか。
こう言ったらなんて言うかな、
なんて思うかな、
とか。
少し嫌になる。
章ちゃん相手になんでそんなに勘繰らなきゃいけないのか。
なんでも喋れて、
なんでも相談できて、
一緒にいることが当たり前。
そんな関係だったじゃん。
それなのに今はなんで。
居心地良いのに、
悪い。
居心地が、良いはずなのに、
逃げ腰な自分がいる。
なんでも喋れてた相手だからこそ。
好きにならなければ、
ただの幼馴染みのままでいれたのに。
『好き』
という感情さえなければ。
わたしは今、素直に章ちゃんの隣で笑えてたのに_______
「ん…。」
目を開けるとホテルの天井が見えた。
少し頭だけ動かしたら昨日の後ろに倒れたままの体勢で寝てたことがわかった。
____動かなかったんだ、わたし
考え事をしてたらいつの間にか寝ちゃってたのか。
枕元のケータイを見るとまだ起床時間までには余裕があった。
_______もっかい寝よ……
今日帰るとはいえ、寝不足は良くない______
そう思ってまた目を閉じた。