第2章 オリエンテーション
あの3人が(章ちゃんはもう正座じゃないけど)、ほんとにわたしたちが上がるまであの状態だとキツイだろうから、ということで急いで上がろうという話になった。
違うなら違うで「良かったね、」で済ませれるし。
兎希「でも大浴場で暴れるって何?どんな遊び方したのって話じゃない?」
「お湯バシャーン!てしてたんじゃない??」
兎希「かなぁ?」
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「わぁ……」
とりあえず着替えるだけ着替えて、髪は乾かさずにそのまま出た。
『もしかしたらやっぱり坂本先生の言ってたことは冗談で三人とももう部屋に戻ってるかも』というわたしたちの算段は大きく外れた。
兎希「いるね」
「いるね…」
しかも他の班の一緒になって遊んでたという男子も居なくなっててほんとにあの三人だけになっていた。
横「あ!やっと来たわ!」
兎希「やっとって何よ。急いだわ。見てよ!雫なんか髪乾かさずに来てくれたんだからね!」
バッ!と指をさされ、刺さるかとびっくりした。
安「あ!ほんまや!風邪引くで」
章ちゃんはそう言うと流れるような動作でわたしの肩にかけてたタオルを手に取り、わたしの頭にかぶせた。
わしゃわしゃと動かす章ちゃんに合わせてタオルが揺れる。
安「ごめんなぁ、急がせて」
「う、ううん…」
恥ずかしい
ここはわたしの家でも、章ちゃんの家でもない。
学校の人がいる前で……
坂「お、上がってきたか。って、安田、お兄ちゃんみたいなことしてるな」
タオルと髪の毛で坂本先生は見えなかったけど、よく通る先生の声はまっすぐにわたしに突き刺さった。
『お兄ちゃんみたい』
わたしに突き刺さってることなんて露知らず、先生は続けた。
坂「おし、じゃあ2人が上がってきたからお前らも正座解除な」
横「っだぁーーーーーー!」
渋「…………」
安「良かったなぁ、2人とも」
横山くんと渋谷くんの正座解除とともに、わたしの公開髪拭きも解除された。
開けた視界の中にそれぞれ痺れている姿が入ってくる。
兎希「ほんと……楽しそうだねぇ…」
兎希が呆れたように頭を抱えて苦笑いをしていた。