第2章 オリエンテーション
兎希や横山くん、渋谷くんとわたしたち女子部屋で合流して班会議が始まった。
始まったんだけど、渋谷くんは心ここに在らず。
…もしかしてさっきの兎希ののぞきこんだ時の距離とか関係あるのかな。
兎希にしては距離近いなぁと思ったけど、あの子自身、首をかしげてるから無意識だったんだろうな。
班会議が終わって、章ちゃんが部屋に帰る前にさり気なく、『ちゃんと布団かぶって寝るんやで』と釘を刺していった。
…言われなくてもちゃんと被りますよ
翌日、朝早くに起こされて1日が始まった。
ラジオ体操から朝食、だったんだけど、渋谷くんがものすごく眠そうだった。
「朝苦手なの?」
安「朝もやけど寝起きがさっぱりせえへんタイプやねん、渋やん。そのうちだんだん起きてくんねやけど、今日は特にいつもより早起きさせられてるから…」
向かい合わせに座る章ちゃんに尋ねるとそう返ってきた。
なるほど。確かに寝起き悪そう。
「あ、章ちゃんはちゃんと寝た?ギターないからまさかとは思うけど」
安「寝たわ!しーちゃんこそ、ちゃんと布団かぶったか?」
クスクスと笑う章ちゃんがくすぐったい。
「そりゃ寒かったからかぶってましたよ~」
そう話していると、章ちゃんの隣に座っていた渋谷くんが…
渋「あかん、無理、わけわからへん」
と、テーブルに突っ伏した。
安「渋やん、髪括ったら少しは目ぇ覚めるんとちゃうん。ピシってしたら自然と起きるやろ」
わしゃわしゃと章ちゃんが渋谷くんの髪の毛を遊ぶ。
渋「髪ゴムないわ」
やぁめろやぁ、とうざったそうに章ちゃんの手を払う渋谷くん。
兎希「…あ。あたしゴム持ってる」
兎希が腕につけていた髪ゴムを腕から外し、渋谷くんにヒラヒラと見せた。
横「あ、ええやん。借りとけ、すばる」
横山くんにそう言われて渋谷くんが兎希の手から髪ゴムを受け取った。手早く慣れた様子で髪を括ると、渋谷くんの顔を隠すものが何もなくなった。
でもさっぱりしすぎて寒そう。
渋「あかん。寒い。」
やっぱ寒かったんだ…
寒いと言って髪ゴムを取ろうとした時、兎希が「さっぱりしたね」と言った。すると渋谷くんが止まって、「…さっきまで何やと思ってたん…汚いってか、」と眉間のシワを深めた。