第2章 オリエンテーション
部屋の前につくと、わたしたち女子の部屋だから、『どーぞ』って章ちゃんが一歩下がる。
部屋の中からはかすかにはしゃぐ声が聞こえる。
横山くんと渋谷くんがはしゃいでるようだ。
『どうぞ、』て今度はわたしが言って、章ちゃんを先に部屋に招く。
部屋に入ると…
安「もうみんな来てるー?って何してんのん」
「わたしたちのベッド…」
章ちゃんの後をついてくと、わたしたちのベッドの片方、ひとつに横山くんと渋谷くんがゴロゴロしてた。
それを兎希が羨ましそうに見てた。
や、なんで羨ましそうに見てんの?
安「男ふたりでひとつのベッドて」
渋「なんや。羨ましいんか」
何故か『ドヤァ』と渋谷くんが自慢げに聞く。
安「ちゃうわ!wwwごめんけどそっち側のベッド、兎希ちゃんが寝てや」
章ちゃんが兎希に言うと、兎希も『まぁ、元からあたしがこっち側だしね』と返した。
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係会はしーちゃんの方が先に終わったのを聞いてて(同じ部屋やから聞こえてん、解散言うてたの)、そんでスリッパがぐちゃぐちゃなってて『まぁ、どれでもいっか』て適当に履いて待ち合わせ場所に目をやった時、一瞬で自分の体温が上がった。
(誰やねん、あいつ)
しーちゃんが男子と話してんのが見えた。
微妙にしーちゃんの頭がかぶってて顔が見えへんけど、多分同じクラスのヤツとかやろ。
そう思いながらも、急いで駆け寄った。
「雫!お待たせ~!」
雫「わ、」
「ほんなら行こか」
無理やり、割って入った。
しーちゃんは少しびっくりした顔をしていた。
それを気づかないふりをして、話してたやつに「自分も急ぎや」って言って、その場を離れる。
不自然に見えないように、と手を取って歩き出す。
牽制の意味でわざと手を繋いでるとこを見せて。
雫「章ちゃん?」
おれの手の中にあるしーちゃんの手が少したじろいだ。
「んー?」
悟られないように。
あくまで普通に、平然と。
後ろを振り返らないおれに何を思ったのか、しーちゃんは小さく『何でもない』と言ったきり、黙りこくった。