第2章 オリエンテーション
夕食後、それぞれの係の場所へと向かう。
と、言ってもわたしと章ちゃんは向かう部屋が同じ。
横山くんは保健係なんだけど、保健係は同伴してる保健医の先生がいるとこなのでまた別の場所。
兎希と渋谷くんは同じ部屋でやるらしい。
安「終わったら出てすぐんとこで待っとってな」
「うん」
係会が終わったあと、わたしたち女子の部屋で班会議をすることになっている。
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入浴係より食事係の方が早く解散になり、章ちゃんに言われたところで章ちゃんを待つ。
「緋刈さん、誰待ってんの〜?」
同じクラスの男の子が隣に立った。
「あ、えっと章ちゃ、ッ安田くん!安田くん待ってる」
「へぇ〜あ、同じ班か〜そっちは男子部屋と女子部屋どっちで班会議?」
「女子の_____「雫!お待たせ〜!」あ、」
女子の部屋、と答えようとすると章ちゃんがちょうど来た。
安「ほんなら行こか〜」
無駄のない動きでわたしの手を取り、わたしが喋っていた男の子に「ほなな〜自分も急ぎや〜」と手を振って歩き出した。
そのテンポの早さにわたわたとしながらついていく。
「章ちゃん?」
安「んー?」
章ちゃんは何でもなかったように前を見て歩く。
…わたしの手を握ったまま。
…じゃあ、わたしだけ?
今さっき、いつもの『しーちゃん』じゃなくて、『雫』って呼ばれてドキドキしてるのは。
たったの少しの距離を急いできたかのように見えたのは、わたしだけ?
手を握られたまま、部屋に向かう間、
さっきのは、さっきのは、とずっと頭をぐるぐる巡る「もしかして」という考え。
自惚れだって思うのに、
自分の体温が上がる。
握られてる手からバレないだろうかという不安。ドキドキ。