第2章 オリエンテーション
夕食が始まると、兎希が渋谷くんにお肉をとられていた。
兎希はベジタリアンだからそんなに怒らないけど、予想外すぎたのか、口をパクパクさせていた。
その後は今度は渋谷くんにデザートを貰ったり、渋谷くんが兎希の手からデザートを1口食べてたり。
…渋谷くんは人見知りなんじゃなかったっけ?
安「しーちゃん、どっち行く?」
「どっちって…ああ、係ね…。どっちでもいいけど…」
どっちにしろ、難しいとか簡単とかなさそう。
安「ほんならおれが入浴係の方行くわ」
パク、とデザートを食べる章ちゃん。
「?わかった…」
なんで入浴係なんだろ?
最初から入浴係って決めてたのかな?
でもそれだったらわざわざ聞かない、かな…?
あ!
もしかして、実は気になる子がいて、その子が入浴係だから、とか?!
いやいやでも全然そんな気配なかったっていうか…
もしいるんならいつの間に?!ってとこだけど……。
なんで入浴係かって聞いたら教えてくれるかな…?
「しょ、章ちゃん?」
恐る恐る(?)目の前の幼なじみに声をかける。
安「ん?」
「ちなみになんで入浴係の方にしたの??」
わたしの質問に章ちゃんは「?」と頭に浮かべてるかのようにポカンとした。
安「なんでって特に理由はあらへんけど…強いていうなら入浴係の仕事て自分らも風呂上がりなわけやん?そしたら湯冷めするんとちゃうかなーって」
「…?」
安「って言うてもしーちゃんはちゃんと髪乾かす子やからあんまし湯冷めとか関係なさそうやねんけどなあ」
そう言ってお得意の眉を下げ「ふはは」と軽く笑った。
……どこまで紳士なの…
優しすぎるよ章ちゃん!
わたしを甘やかしすぎだよ!
「っ、でもお風呂上がりになるのは章ちゃんも一緒じゃない?大丈夫?」
安「おれは体丈夫やからだいじょ〜ぶ~」
にこにことピースをかます章ちゃん。
た、たしかに顔に似合わず鍛えてる章ちゃんだけど…!
「…ん?わたしも湯冷めするほど身体弱くないよ…?」
安「駄目」
「え」
安「駄目」
断固許しません、と2回も繰り返す章ちゃんだった………。