第2章 オリエンテーション
「章ちゃんはあんまし巻かないよね」
安「せやんなぁ~まず頭はちゃんと乾かすから」
ふ、と笑う口の端が上がる章ちゃんが可愛い。
可愛いんだけどそういう自然さがかっこよくもある。
「ね。まぁわたしも章ちゃんがちゃんと乾かすのを見て『わたしも乾かさなきゃ…!』って思ったんだけどね」
安「そうなん??そういえばちっちゃい頃、しーちゃんも自然乾燥やったやんな??」
「うん…」
我ながら苦笑する理由だけど。
わたしも前は…と言っても小学校中学年くらいだけど。
今の兎希と同じ考えだった。
めんどくさいし。あったかい風が気持ち悪くもあったし。
けど、章ちゃんが泊まりに来た時にドライヤーを使うのを何回も見て、『わたしもした方がいいのかな』と自分の髪の毛先を見ながら思った。
それにその頃、少しずつ周りの女の子たちが女の子らしくなっていっていて。
『やっぱりスカートの方が女の子らしい』とか『髪乾かさないで寝るなんてガサツ』とか。
そんなこと言われたら嫌じゃない?
『章ちゃんがそんな風に思ってたらどうしよう!』てなってわたしも乾かすようになった。
やっぱり、気になる幼なじみにそんなこと思われたくないじゃない?女の子として見てもらいたいじゃない??
あの頃からわたしは周りの目を気にしてたんだなぁと情けなくもなるけど、それは今もそうだから何とも言えない。
そんなことをうっすらと思い出しながら考えていると、三宅先生の独特な声が聞こえた。
三「はい、じゃあ手を合わせてください」
…うん??
首をかしげながらも手を合わせる。
三「いただきま〜す♪」
……三宅先生、わたしたち、もう、高校生なんですけど……
そんな感じで、三宅先生の緩い、保父さんのような掛け声で夕飯が始まった。