第2章 オリエンテーション
あの時、
しーちゃんがこけへんようにって支えようとしたけど一緒にこけてしまった時。
痛い思いをしたけど、その時、しーちゃんはおれが守らなって。
それまでにも何かある度におれの中ではしーちゃんのことばかりで。
幼なじみだから、他の女の子たちより近い距離だから。
そう思ってたけど違った。
多分、それくらいだったと思う。
幼なじみとしてだけじゃなく、他になにか違う、強い特別な何かだということに気づき出したのは。
明確な答えが出たのはもう少しあとだったけど『守らなきゃ』って思ったのはその時だった。
「章ちゃんは変わんないね」
そう言って横で笑うしーちゃんに少し胸が痛むのはこれで何回目やろ?
「…しーちゃんも変わらんで~」
笑顔を作って返したのはこれで何回目やろ?
自分でこれは何回目やろ何回目やろって言うくせに
幼なじみのポジションのままでいるのはどこのどいつやねんって話やろ?
(ほんま意気地無しやなぁ)
でも逆に。
逆にやで?
このおれの幼なじみポジションておれだけのものやん?
それはそれで、やろ?
「章ちゃん、足元」
「んへっ?」
しーちゃんの声に横を振り向いた瞬間、躓いた。
「っと、」
コケるギリギリで踏ん張ってなんとか体勢を持ち直した。
「っぶね!」
足元に木の根っこがあったらしく、それに躓いた。
「大丈夫??わたしだったら確実に転んでたよ~」
章ちゃん、すご〜い!!!としーちゃんが手を叩いて喜ぶ。
…可愛ええなぁ。
でもかっこ悪いとこ見せてもうたわ…。