第2章 オリエンテーション
こんな風に章ちゃんがわたしと兎希を比べる時、
『章ちゃんは兎希の事が好きなんじゃないか』、『兎希の事をずっと見てるから比べれるほどに知ってるんじゃないか』、そう考えてしまう。
兎希からはそんなことないって言ってくれるけど、そんなの、本人に聞かないと分からないだろうし、普通、『雫がやっさんがあたしのこと好きなんじゃないかって言ってんだけどどうなの?』なんて聞くわけないし、ましてや聞かれても『おん、そうやで、兎希ちゃんが好きやで』なんて言わないだろう。
モヤモヤする。
わたしの気持ちを知らないで、
いや、知りようもないだろうけど、
わたしがこんな事考えてるなんて知らないで章ちゃんは手を引く。
それがまたモヤモヤ感を一層増幅させる。
先に兎希たちの姿が見えた。
安「あー!待っててくれたんー?」
章ちゃんが大きな声で、手を振りながら三人に呼びかけた。
…良かった…追いつけて…。
兎希たちが置いていくわけないって思ってても、きつい時はどうしても弱気になっちゃう。
…ありえないことを考えてしまうくらいに。
「ご、ごめんね、わたしのせいで…」
同じくらいの位置についてから、息を整えつつ、汗を拭い、言った。
待っていてくれたとはいえ、迷惑をかけたことに違いはない。
兎希「んーん。別にゴールさえすれば良いんだから急がなくていいんだって!あたしもそろそろ疲れたからめっちゃゆっくり行こっかな」
ね?と兎希は笑いかけてくれた。
少しでも疑ってしまったことが恥ずかしくなる。
それと同時に、やっぱり兎希は優しいということも気づく。
きっとわたしが諦めない理由も分かってくれてる。
たとえ喘息でキツくても、
体力がなくても、
みんなと一緒に歩きたい。