第2章 オリエンテーション
「暑いね…」
安「そうやんなあ〜…」
1通りの説明が終わり、各班が出発する。
まだ夏には遠いはずだけど、晴れているせいか、太陽が元気で暑い。
帽子をかぶっていても頭が熱い。
「じゃあ、あたしたちも出発しますか」
班長らしく、班の中でいちばん、ウォークラリーのスタート地点の近くにいる兎希が言った。
暑がりで汗っかきだと自負している兎希は既にジャージの袖を捲っている。
それを見て渋谷くんや横山くんが、「寒いからとか言って袖伸ばしてた奴が捲ってるわ!」と笑っている。
「しーちゃん、きつなったら言うんやで」
章ちゃんが気遣ってくれる。
「大丈夫だよ〜。過保護だなあ」
わたしが喘息持ちということで小さい頃から章ちゃんが気にしてくれる。
けどその喘息も結構昔よりは出てこなくなってきたし、出てもすぐ治まるようになってきたからそこまで心配してくれなくても良いんだけど…
優しい章ちゃんは、何度言ってもこんな風に声をかけてくれる。
でも、これは、章ちゃんが優しいからであって、
わたしに『特別』優しいわけではない。
きっと兎希が喘息持ちとかでも、同じように声をかけるだろう。
幼馴染みで、近くにいたからって、
自分だけが章ちゃんの特別だなんて、
優しさを独り占めできるだなんて、
そんなこと、思ってはいけない。
この優しさを、
履き違えてはいけない。
「しーちゃん、行くで」
ぼんやりと考えていると、既にみんなは歩き出していた。
「あ、ごめん、今行くから待って!」
タタッ、と小走り気味にみんなの元へ駆け寄り、
「はぐれないようにねっ」
という兎希の声の元、今度こそ揃って出発した。
太陽が、眩しい。