第2章 オリエンテーション
「いやぁ~バスでの寝方、可愛かったなぁ」
しぶやんが着替えながら言った。
「せやなあ。寝てるはずやのにもう我がもんかのようにな」
しぶやんによこちょが乗っかる。
バスでの寝方、つまりはさっきのおれとしーちゃんの寝方のことやろう。
「我がもんて。そんなこと…」
「ほんまもう告ったったらええのに」
よこちょが言う。
「やからなんべんも言うてるけど、」
「今の関係さえ壊れたら嫌なんやろ?でもなぁ…」
「まぁ、ええのとちゃう?」
まだよこちょが何か言おうとしたけど、それを遮るようにしぶやんが言った。
「もし今行動せえへんせいで誰かにとられたかて、取り返せばええやん」
「男前か」
しぶやんの発言に笑うよこちょ。
それに対し、「笑うなや」と言うしぶやんも笑っている。
…もし、しーちゃんが他の誰かと付き合ったら。
おれはどうするんやろ。
素直に喜べるやろか。
それとも、自分の気持ちを隠して喜んだふりができるやろか。
それとも…しーちゃんの気持ちを無視してでも、
いや、しーちゃんがおれの元へ来るように、何か仕向けるのか
「異性の幼馴染みもつと大変やなあ、安」
そう言ってしぶやんは眉を下げて笑った。