第2章 オリエンテーション
「あ、さっきね」
「うん?」
着替え終わり、ベッドに座りゆっくりしていると、兎希が思い出したように話し出した。
心做しか、その顔は赤く染まっているように見える。
「雫とやっさんが寄り添って寝てるのに気付いて、渋谷くんときみたに教えたんだけどね、」
「うん」
「その時、ちゃんと見てるかなって振り向いたら渋谷くんの顔が真ん前にあったという…」
「え」
「ってなことがあってね……」
うわぁ…
わたしでさえ、幼馴染の章ちゃんの顔が真ん前にあるなんて状況、ドキドキするのに。
「それは…ドキドキするね……」
「もうほんとね、渋谷くん、すごいよ。なんだろう全部が整ってるというかバランスがいいというか…あ、しかもピアス開けてんの!」
「ピアスなら章ちゃんも開けてる」
もう気持ちが昂っているのか、兎希がやっぱり顔を赤くして言う。
何ていうか…ここまで男の子のことで饒舌になってる兎希は見たことないかもしれない。
でもピアスについては章ちゃんも開けてるから。
可愛いピアスとかつけてるから!
でも兎希は章ちゃんのことを出したわたしに対して呆れた顔をする。
「…やっさんは今違う」
「違うって何!章ちゃんも素敵でしょ!」
「やっさんは雫のものだからね、今話に出されてもそうだねとしか言いようがないからね」
「っ!わたしのものって…!!」
ただの幼馴染みだし!!!
あーもー!今のでわたしまで顔赤くなっちゃった気がする…!
「~!そんなことより!」
こうなったら反撃。
「うん?」
「兎希、渋谷くんのこと、好きでしょ!」
兎希のことでわたしに気づけないことはもうないんだから!
攻撃は効いたようで、
兎希が固まった。
分かりやすく、固まった。