第2章 オリエンテーション
窓に寄りかかるようにして目を閉じた。
窓に頭をひっつけると振動が辛いけど、真っ直ぐで寝るよりは楽なはず。
目を閉じている外側から、章ちゃんの声が聞こえる。
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風が吹き渡る、目の前いっぱいに広がる、ひまわり畑。
太陽に向かって伸びるその花たちがとても輝いて見えて、小さなわたしは近くで見たいと、思わず走り出す。
『しーちゃん!』
走り出したわたしを呼び止めようと、章ちゃんの声が響いた。
『しょうちゃ〜ん!しょうちゃんもはやく!』
わたしは後ろを振り向いて、一緒にひまわり畑を見たくて、章ちゃんを呼んだ。
『もお~…』
そう言うけど、章ちゃんも本当はひまわり畑が見たかったようで、結局、わたしを追いかけてくる。
『わたしよりおっきい!』
ひまわり畑を進んでいくと、もう周りがひまわりだらけで、それ以外のものが見えないほどに背を越されていた。
『おはながみえへんなぁ』
わたしよりも身長の高い小さな章ちゃんも背伸びして周りを見渡すけど、どうしたってその目がひまわりの花より高くなることは無い。
太陽に向かって咲いているから、ひまわりより低い私たちにはひまわりの花が見えなかった。
『雫~?』
遠くで、お母さんがわたしを呼んでる声が聞こえた。
『っあははっ』
その声の遠さに、わたしはおかしくなって笑った。
『?どうしたん??』
章ちゃんはそれを不思議そうに首をかしげる。
『いつもはおかあさんのこえがよくきこえるのに、いまはちいさいなって。おはなにまもられてるみたい。ここにまだいたいなあ』
まるでわたしを閉じ込めるように背の高いひまわりたち。
それはわたしを何かから守っているようで。
『…せやなぁ〜…でもおばさん、よんでるし…』
わたしのわがままに章ちゃんが困ったように笑った。
『うん…』
『あ、せや!』
章ちゃんが閃いた顔をする。
『ほな、ここからでたら、ぼくがしーちゃんをまもったるからな?』
そう言った章ちゃんの顔はひまわりのように、明るく優しかった。
だから、きっと章ちゃんはひまわりと太陽の子なんだ____