第2章 オリエンテーション
「言われてみればそやなぁ…」
中学で一緒になった兎希ちゃんのことは苗字を呼び捨てにするし、兎希ちゃんもよこちょのことはあだ名で呼ぶ。
けど、しーちゃんはよこちょのことを横山くんって呼ぶし、よこちょもしーちゃんのことを緋刈さんって呼ぶ。
「もしかしてしーちゃんって恋愛とか、興味無いんやろか……」
赤面症やからすぐ顔が赤なる。
だから誰が相手でもすぐ赤くなるし、みんなの前に立つ時ももちろん赤くなる。
これでは誰を意識してるかなんて分からない。
「はぁ〜…難しいわぁ…」
「…お前ほんっま鈍いっていうかなんていうか…」
「だっ!すばる!」
よこちょがすごい勢いでしぶやんの肩を叩き、言葉を止めた。
「??なんて??」
「なんでもないで。な?すばる」
「…おん。なんでもないわチンパンジーこら」
「ちょおっ!なんでそんな喧嘩腰なん!!」
喧嘩腰かと思いきや、ははは、と笑うから、しぶやんのお得意の演技やったってすぐ分かる。
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「…もう…兎希と章ちゃんって、過保護だよね」
「そんなことないって〜」
まぁ…酔う方ではあるけど、そんなに気を遣わなくたって…
「ほら、しーちゃんってバス乗ったら話すより寝ることの方が多いやん?それもちょうどええやんか」
な?と章ちゃんが優しくわたしを諭す。
兎希的にはわたしは酔いやすいらしく、兎希班長の奨めでわたしは窓側の席に座ることになった。
そして、酔った時の対応が一番慣れてるだろうと章ちゃんがその隣に座るようにと。
「吐くまではいったことないんだけどなぁ」
「危ない時はあったやろ」
「…うん…」
あれはいつだったか、バスの中ではまだ大丈夫だったんだけど、目的地に着いてから、いざ降りるとなった時に我慢していた吐き気が込み上がってきて吐く寸前までいったことがあった…。
「無理せんと、寝とってええんやで?」
「うん…先に寝とこうかな…あっちに着いたらバタバタするだろうし。」
「しーちゃんは年中無休で眠いからなぁ」
あはは、と笑いかけてくれる。
「眠気はなくなりません」