第2章 オリエンテーション
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「なぁ、安って緋刈さんのこと、好きなんやろ?」
「っえ、」
「…すばる、直球やな」
2人がトイレに行った後、しぶやんが突然言った。
「やって前からなんか言ってたやん?幼なじみの子がどうたらこうたらーって」
「…しぶやん、覚えてたんやね……」
人の色恋沙汰には興味無いと思っていたし、実際そういうとこしか見てへんやったから意外やった。
「まぁ…唯一安から聞いた女子の話やったしなぁ。」
「そうやったっけ?」
女子との関わりがないわけでもないけど…例えば兎希ちゃんのことやって、話した気がすんねんけど…してへんやったかな?
「安は口を開けば二言目には緋刈さんの事やもんなァ」
とよこちょが言った。
「…そうやろか?」
「そやで〜?『そういえばおれの幼馴染みがな~』って。」
「おん。むっちゃ言うてた。やのにまだ発展なしかいって」
しぶやんとよこちょが顔を見合わせながら言う。
…おれやって、ほんまは発展したい。
けど、まだ踏み出せない。
そのくせ、誰にもとられたくなくて、
誰のものにもなってほしくなくて、
害虫駆除とかしている。
本当に自分勝手だと思う。
己の我侭のせいで、しーちゃんの恋愛感情なんて無視。
もしかしたら恋したいと思っているのかもしれない。
…?
でも……そういえばしーちゃんが『○○が好き』っていうような話は聞いたことがない気がする。
…いや、ないな?
おれが幼馴染みでも男やから言えてへんだけで、
実は兎希ちゃんとかに相談してたりするんやろか?
でもそれやったら出会ってすぐにおれがしーちゃんのこと好きやって気づき、協力してきた兎希ちゃんならおれに教えてくれるはずや。
じゃあ、小学生の頃は…?
「、なぁ、よこちょ」
「ん?」
「小学生の時、しーちゃんが誰が好きやったとか、聞いたことある?」
一瞬、よこちょの目が泳いだ。
…ような気がした。
「い、やぁ?何も…お前らと同じ小中やったけど緋刈さんとはそこまで仲良うなかったし…安とおる時に喋るくらいで他は関わりなかったしやなぁ」