第1章 わたしの
兎希ちゃんにしーちゃんの隣を譲ろうとしたら断られてもうた。
多分、おれの気持ちを知っとるからやろうなぁ…
中学の時、密かに抱えていたしーちゃんへのこの気持ちを兎希ちゃんに言い当てられてもうてん。
告ったらいいのに、てのは何度も言われた。
あたしからしたら2人ともお似合いさんなのに、とも。
おれやって、何度も言うてしまおうかって思ったんやけど、その度に、
もし、フラれたら
っていう思いが脳みそを支配してまうねん。
やって、どうしたって、どう繕ったって、
告白した事実は消えへんから、今までの『仲のええ幼なじみ』っていう関係が崩されてまうやろ?
それでしーちゃんの隣におるんが難しなるなら、
おれは今のままがええんやないかって。
いつもそれで足踏みしてる。
それでも、しーちゃんが他の奴にとられるんは嫌やから、陰に隠れてこっそりと誰も男が近づかんようにしてたりする。
本人は自覚ないみたいやけど、しーちゃんは人気やねん。
ほんまこっそり男子ん中でされてる女子ランク付みたいなやつに毎回ランクインしてんねやで?
ほんで、それを兎希ちゃんに言うたら、あたしも援護射撃する!と協力してくれてる。
でもそんな兎希ちゃんもランクインしてるっちゅーんはまだ言うたことない。
「おだてなくていいから…ほら、着くよ。」
自分のことを褒められるのが慣れてない兎希ちゃんが照れて話を切り上げる。
いっつもこうやねん。
照れてるってのがもろにわかるから、しーちゃんと顔を見合わせて笑うと、ものすごい目で睨まれてもうた。
こわぁ〜w
「うーーーどきどきする!」
学校に到着すると、わたしたちと同じ、新入生で溢れかえっていた。
「あたしらの靴箱はあそこみたいだね」
兎希がいちばん人が集まっているところを指さす。
「ほんまや〜、ほんならあそこにクラス貼られてんねやろね?」
章ちゃんが「ね?」と顔をのぞき込んでくる。
…いちいち心臓に悪いってば…!
先ほどとは違うドキドキに困りながらも、そうだね、と返す。
「同じクラスになってますように!」
とま兎希が大きく拝むから、わたしも章ちゃんもそれを真似て、拝んだ。