第1章 わたしの
「俺も時々遊びに行くから」
「えっ?!松岡さんが?!何しに…」
「言ったろ?知り合いがいるって」
言ってはいたけど…軽音部に??
「軽音部に知り合いって…顧問の先生ってことですか?」
「いや、顧問の先生だけじゃなくても他にもたくさん。」
「へぇ〜…」
学校の先生に知り合いが多いってすごい…
実は松岡さんも先生してたとか??
「うん、これでいいよ。あとはぁ…制服か。
揃えておくから採寸だけいい?」
「あっ、はい!」
「じゃあちょっと来て」
「は〜い…しーちゃん、もうちょい待っとける?」
「うん。大丈夫だよ」
制服の採寸のために章ちゃんと長野さんが裏に消え、お客さんも今いないため、必然的にわたしと松岡さんだけになる。
…よく知らない人と2人って…気まずいな…。
「お嬢ちゃん」
「っはい?」
び、びっくりした…!
「安田のこと、好きなんだろ?」
「!!」
ソッと耳打ちされ、内容にも、くすぐったさにもビクリと肩を揺らしてしまった。
肯定しているようなものだ。
「あ、あの、」
「心配すんな。言わねぇよ。んな野暮なこたァしないって」
ニヤリと笑うのが信用ならないというかですね…!
「いやぁ〜すぐ赤くなって分かりやすいねぇ」
絶対面白がってるよ松岡さん!!
「ただの幼なじみじゃないんでしょ?」
「え゛っ」
クスクスと長野さんが笑う。
「だって彼女が幼なじみですって言った時、何も言ってなかったけど反応はしてたもん」
「…してました?」
「うん。まぁカウンター越しの正面にいた僕が分かる程度だったと思うけど。」
その言葉にホッと胸をなでおろす。
きっとしーちゃんは気づいてないはずや。
「若いって良いねぇ…」
「そうですかぁ?思い通りにならないことばっかですよ〜?」
今だってしたいことをすることが思い通りになってへん。
「いくつになってもそんなもんそんなもん。
けどまだ若いから何度だって何だって失敗しても思い通りにならなくても頑張れるでしょ?
でもねぇ、歳をとるとそうはいかないんだよ。
何事にも何か理由がないと動けなかったり、保守的になっちゃうんだよねぇ…」
長野さんが眉を下げて、切なそうに笑う。