第1章 わたしの
「でも探すの、学校の近くで良いの?」
学校を出て、ふらふらと歩き回る。
「おん。一応家の周りでも探してみるけど。学校に近い方が平日も出来るかなーって思ってん。」
なるほど…学校から直なら時間をあまり気にしないで済む。
「どんなのが良いとかは?」
「…コンビニ??」
「…無難だね…」
章ちゃんがバイトかぁ…
うーーん…コンビニ……うん。いそう。いそうだよ章ちゃん。
でも…
「ウェイターさんでも良いかも…」
「ん?」
「っ!」
口から出てた…!
「や、あの、カフェとかでウェイターさんも!その、楽しいんじゃないかなって…!」
ウェイター服が見たいとかそういうんじゃなくて!!見たいけど!!
「確かに楽しそう…もしそういうとこあったら『おごりやで!』とか言ってコーヒー出したり?」
あはは、と笑う。
「じゃあいつも奢ってもらお」
悪戯っぽく言うと、章ちゃんが固まった。
「?」
「っ、それ、バイト代無くなってまうわ」
あはは、とまた笑う章ちゃんはどことなくぎこちなくて、少しだけ頬が赤く見えた。
あかん。
時々しーちゃんが見せる悪戯っ子みたいな笑い方。
可愛いんだけど、魅惑的というか…
惚れた弱みというか…
おれがバイトしたいのは理由がある。
もちろん、自分で稼いだお金なら誰にも文句言えへんやろっていうこともある。
両親としては放任主義のくせに成績が下がれば、すぐ音楽のせいにする。
小遣いとして貰ってる分でギターやそれに伴う用品を買っても「その為に渡してるんじゃない」という始末。
やから、自分で稼いだ金で買っていけば、「おれが稼いだ金や」って言えるんやないかって。
それと、もうひとつ。
しーちゃんへのプレゼント。
誕生日が4月やから、今年は無理やったけど、まだクリスマスが残ってる。
それまでにはバイトも始めて、そのお金で買いたい。
そして来年こそは、自分が稼いだお金でしーちゃんへのプレゼントを渡したい。
こっちの理由は、内緒。
言ったら「プレゼントなんて無くても良いのに」って絶対言う。
だから内緒。
「章ちゃん、あそこのコンビニ募集してるよ」
「ん?あ、おん!要項見よ」
「うん」と言いながらついてきてくれる。