第1章 わたしの
結局、兎希が断ったから、女子の学級委員は、手を挙げた女子数人でジャンケンすることになった。
その間に、列ごとに黒板に、なりたい委員と係の所に名前を書くようにと先生が言った。
「廊下側」ということで、わたしたちの列から。
「なぁなぁ、図書委員、おれ名前書いてもええ?」
わたしの後ろから来る章ちゃんが言った。
「え?別に…」
自分で言っておきながら、何が「別に」だよ!喜んで!でしょ!!!と心の中で突っ込む。
「ほんま?」
章ちゃんが首を傾げる。
素直になるチャンスをくれてるような気がした。
「うん。…一緒になれたら…楽しいかもね…?」
兎希が言ってたように、当番を一緒にできるというのが嬉しい。
「おん!せやね!」
章ちゃんも嬉しそうに笑ってくれる。
「あ、おれ字ぃ下手やからしーちゃん書いてや」
そう言って、掴んでたチョークをわたしに渡す。
「うん?良いけど…」
チョークを受け取り、二人分の名前を書く。
「しーちゃんって…お前ら仲いいな?」
近くにいた坂本先生が声をかけてきた。
「おれら、幼なじみなんですよお」
ほわぁ、と章ちゃんが先に答えてくれる。
「へぇ〜だからかぁ…。良かったなぁ。同じ学校で同じクラス。」
そう言って、にこにこしている章ちゃんの頭をがしがしと撫でる坂本先生。
…お父さんみたいw
席に戻ると、兎希と渋谷くんはもう先に座っていた。
「2人とも、何にしたん?」
章ちゃんがふたりを見比べながら聞く。
「えっと…」
兎希が渋谷くんを見る。
うん?
わたしが改めて黒板を見るのと、渋谷くんが言ったのは同時だった。
「美術係」
と。
う、うわぁ…!
兎希、良かったね…!
「おおお、2人で?」
「…このまま他の人が名前を書かなければ、ね。」
兎希が顔を赤くする。
多分、渋谷くんと一緒っていうのが嬉しい反面、照れみたいなもの。
「おらへんやろ。係かぶるってなかなかないやろし。」
さほど笑ってるわけでもないけど、渋谷くんが喋ってることに何故か「おお、」ってなる。
人見知りって聞いてたからかな。