第1章 わたしの
「いや?別にすんごいなりたい訳じゃないから。
社会担当とかにしようかな。」
「また気遣ってるでしょ?」
「気遣ってないし!気ぃ遣いなのは雫でしょ!ヤッさんとしたら?図書委員。幼なじみって言っても同じクラスは初めてなんだからどうせならね?」
「っな、」
「ね?ヤッさん。せっかく同じクラスになったんだし。
新鮮だね?」
やけに推してくるね、兎希…
章ちゃんは何やら力強く「ね?」と言われると、
「あ、おん!せやね!!」
ほわぁ、と笑う。
「美術係もいいかなぁ…ずっと美術は専攻するつもりだし」
「あっ、せやん。美術と書道と保育?やったっけ?」
そう。
3つのうちどれかを選び、1年時はそれによってクラスが決まっている。
2年生になると、また私文コースや公立の理系コースなど分かれることになるらしい。
「ってことは…」
と章ちゃんが渋谷くんを見る。
「なんや。」
その視線を受け、渋谷くんが不服そうな顔をする。
「すばる、美術選んだん?」
横山くんがものすごく目を丸くして渋谷くんに問う。
「あかんの?」
「や、画伯やん」
と横山くん。
画伯って…
「でも言うてもよこちょもなかなかのもんやと思うで?」
「うん。確かに横山くんもあまり…」
「緋刈さん、ひどない?」
「ご、ごめん」
傷つくわぁ、と言われてしまって思わず謝る。
「クラス全員が美術ってことだもんね?…意外。きみたが美術って。好きだったっけ?」
兎希が横山くんに言う。
「好きやなくても出来るわ!
まぁ、なんか美術が一番自由そうやなって。」
「お前そんな理由で選んだんか」
渋谷くんが横山くんに鋭くつっこむ。
「じゃあすばるは何でなん」
「絵を極めたいからや」
キリッとした顔で言う。
「んぶっふっ」
それを聞いて章ちゃんが吹き出す。
「何やねん安」
「いやっ、」
鋭い視線を次は章ちゃんに向ける。
「そ、そんなに…その、ひどいの…?」
気になる。
章ちゃんが…人を批判することが少ないあの章ちゃんがそんな吹き出すほどの画力…。
「おいすばる。緋刈さんが聞くってなかなかないぞ」
と横山くんが言う。