第1章 わたしの
隣の章ちゃんの家に向かう。
玄関のドアノブに手をかける。
ガチャ、
(やっぱり)
案の定、鍵が開いてた。
章ちゃんは不用心だと思う。
この地域は別に全世帯が仲が良いとか、隣の家までの距離が長いとかじゃない。
普通に住宅街である。
なのに章ちゃんは結構な頻度で鍵が開けっ放し。
「章ちゃーん?また開けっ放しだっ__」
中に入り、声をかけると、
「ん??」
裸で、下だけタオルを巻いた状態の章ちゃんが立っていた。
「っ?!!」
急いで体ごと目を逸らす。
「しーちゃん?どうしたん??」
言いながら、頭を拭いているようで、微かにタオルの擦れる音が聞こえる。
「やっ、あの!直接の方が早いしわかりやすいかなって思って…!」
「あっ!ほんまー?助かるわぁ。
上がって上がって」
わたしが直視できないことに気付いてないのか、呑気に言う。
「、の前に、その、服を、」
恥ずかしくてもごもごと小さくなってしまう声。
意識してるのがバレてしまう、とさらに恥ずかしくなる。
「ん?ああ、風呂入ったはええけどパンツ忘れてもうてん〜」
あははは〜、といつもの調子で言って章ちゃんが歩いていく音がする。
(言ってる場合じゃないから!…わたし女の子として見られてないのかな、やっぱり…。)
そもそも、男子が女子に裸見られて恥ずかしがるのかは知らないけど…。
「やぁ〜、来てくれて助かったわぁ。多分ケータイ見ながらやったら何か忘れるとこやったなぁ。ありがとう」
あの後、すぐに章ちゃんが服を着てくれたからなんとか明日の準備を進められた。
…途中、「顔、赤ない?」って聞かれたけど、必死に誤魔化した。
「どういたしまして。それより、鍵」
「んー?」
「さっき、言いそびれたけど…また鍵開けっ放しだったよ」
そう言うと、「あぁ、」と思い出したように章ちゃんが言う。
「大丈夫やろ〜?」
ははは〜、とまた呑気な笑い声を上げる。
「だめ。ちゃんと締めなきゃ」
「ほなしーちゃんが、一緒に住むようになったらちゃんと締めるわ」
いきなり、章ちゃんの口調が真剣なものに変わったから、驚いて目を見張る。