第1章 わたしの
おまけにやたらとしーちゃんに嫌な態度をとる。
「うわっ!あたしが同じクラスになれなかったのに
なんで緋刈さんは安田くんと同じクラスなわけぇ?」
こっちが「うわ」やし。
しーちゃんは「あはは、」と苦笑いだけする。
こういう時、強く言い返せる性格やないのは知ってる。
そして、
傷つきやすいことも。
受け流したらええことも、真っ直ぐにそのまま受け止めてしまう子やから。
ずっと前から知ってる。
「おれはしーちゃんが同じクラスで良かったわぁ。
幼なじみやし、ここ受かったんもしーちゃんのおかげやからなぁ」
ちらりとしーちゃんの顔を見ると、微かに嬉しそうに笑う。
「ほんで?なんか用??」
あえて冷たく言う。早よ帰れ。
「あっ!そうそう!ねぇ、ID変えたとかした?連絡しようと思ったら、安田くん、友達のとこからいなくなってたんだけど~」
当たり前やん。
ブロックしてんねんから。でもそれは正直には言わへん。
やって人脈はあればあるだけ「使える」やろ??
それが嫌いなやつでも。
「それなぁ、」と話だそうとしたら、
いつの間にか兎希ちゃんとしぶやんが帰ってきていて、教卓に、運んできたものを置くのが目に入った。
置き終わってこっちを向いた時、兎希ちゃんの顔が一気に険しくなった。
こいつのことに気づいたんやろう。
兎希ちゃんは、こいつがこっちを見てるのをええことに中指を立てたり、親指を下に向けたりしている。
しーちゃんもそれに気づいたらしく、バレないように口を手で覆い、笑っているようだ。
手だけで罵倒している兎希ちゃんを見てしぶやんもこっちに目を向け、明らかにイラッとした顔をする。
(そら、怒るやろなぁ…)
やってこいつ、しぶやんの席におんねんもん。座ってはおらんけど、邪魔なところにおる。
「何?どうしたの?」とおれの視線が違うところに向けられていることに気づき、後ろを振り返った瞬間、
「邪魔やねん、どけや」
と、しぶやんが言った。
呆気に取られてすぐにどかへんことに、余計腹たったのか、ガンッと少し机を蹴る。