第8章 言えば伝わる
「コビーさんって、そういう服も持ってるんですね。いつもジャージなので、今日もラフな格好かと思ってました」
そないやったらにそう言われ、コビーはヘルメッポに連れられてジャケットを買いに行ったことを思い出した。
「あの、ヘルメッポさんがアドバイスしてくれて」
「あ、そう言ってましたよね。ヘルメッポさんはオシャレですもんね」
「はい!僕、ジャケット持ってなかったんですけど、ヘルメッポさんが店に連れてってくれて。ヘルメッポさんは面倒見がいいんです」
「頼れるお兄さんですね」
コビーは笑顔でうなずく。親友が褒められるのは嬉しい。
ウェイターが魚料理を持ってきた。
白身魚をソテーしたものに、海藻が付け合わせとして盛られている。
「東の海より取り寄せた酒を使ったソースをかけてございます」
二人は魚にナイフを入れる。
「これも美味しい!」
そないやったらはそう言ったが、コビーは黙っている。
「コビーさん?」
そないやったらに名前を呼ばれ、コビーはハッとする。
「あ、すみません!黙っちゃって!」
「どうしたんですか?」
「いえ、僕は東の海にいたので・・・なんだか懐かしくて」
コビーの瞳が潤んでいる。
涙をこらえているように見える。
実際、コビーは泣くのを我慢していた。
(なんでだろう、東の海を出てからこんな気持ちになったことないのに・・・)
急に懐かしさに捉われた。
「!」
コビーがびっくりして目を見開いた。
そないやったらが自分の頭を撫でているのだ。
「あ、え、え、っと、え??!!」
コビーは突然のことに目を回しそうになる。
「コビーさん、我慢しなくていいですよ。この間、甘えさせてくれたお礼です。今日はコビーさんが泣いていい番です」
そないやったらはにっこり笑うと、頭を撫で続けた。