第8章 言えば伝わる
「えっと、コビーさん・・・」
急に手を取られ、そないやったらは戸惑った声を出した。
コビーも我に返り、手をぱっと離す。
「す、すみません!あの・・・僕・・・」
二人とも俯いて、テーブルをじっと見つめている。
気まずい空気が流れる。
(どうしよう、思わず手を取っちゃった!!)
コビーは、具合がどの程度なのか確認するつもりで手を取ってしまったのだ。
(そないやったらさんを驚かせてしまった・・・どうしよう、嫌われちゃったかな・・・)
コビーは頭の中をぐるぐるとさせている。
その時、「失礼致します」とウェイターが障子を開けた。
「前菜でございます」
皿の上には新鮮な魚や野菜が盛り付けられている。
「た、食べましょうか」
コビーがおずおずと切り出すと、そないやったらもうなずく。
二人とも静かに料理を口へ運んだ。
「美味しい!」
先にそないやったらがしゃべった。
「本当ですか?!」
「はい、とっても美味しいです!」
「よ、良かった!」
コビーの顔がほころんだ。
「このドレッシング美味しいです。どうやって作るのかな」
「そないやったらさんは食堂で働いてるだけあって、料理に関心があるんですね。すごいな」
「いえ、まだ半人前ですし」
「でも、そないやったらさんの作ってくれた食事は美味しかったです。そのお蔭で僕は早く元気になれました」
「そんな・・・ありがとうございます!」
二人とも照れながら、少しずつ緊張がほぐれてきた。