• テキストサイズ

潮風【コビー】

第7章 強くなるんだ


コビーは瞬く間に病院へ着いた。

「そないやったらさん・・・」

コビーは神経を集中させる。

「コビーさん!」

またそないやったらの声が聞えた。

「あっちか!」

コビーはそないやったらの気配がする場所へと急ぐ。

そないやったらの姿が見えた。

菜園の陰に背を丸めて座り込んでいる。

「そないやったらさん!」

コビーが呼びかけると、そないやったらはびっくりした表情で顔を上げた。

「コ、コビーさん!なんで・・・」

「そないやったらさん、どうしたんですか?」

そないやったらがポロポロと涙をこぼしているのを見て、慌ててコビーはハンカチを取り出す。

ふと、そないやったらの手に目をやると、火傷がある。

「そないやったらさん火傷したんですか!?」

「はい・・・」

「水で冷やさないと!」

「あの、アロエを・・・」

「アロエですか?えっと、トゲトゲした形をしている?」

「そうです」

そないやったらはこっくり頷く。コビーは辺りを見回し、アロエの葉を2、3本手折ると、そないやったらに渡した。

そないやったらは表面の葉を剥き、ゼリー状の部分を手に当てる。

そして、エプロンのポケットから包帯を取り出し、手に巻こうとした。

「あ、僕が巻きます!」

コビーは慣れた手付きで包帯を巻き、アロエが患部からずれない様に固定した。

「すみません・・・」

「そんな、大丈夫ですか?痛むんじゃないですか?」

コビーは心配そうにそないやったらの顔を覗く。

そないやったらは首を横に振る。

「でも、泣いてるし・・・我慢しないで下さい」

「あの、これは・・・転んじゃって」

「転んだんですか?足は怪我してませんか?」

「少しひねっただけです」

コビーはおずおずと手をそないやったらの肩に置いた。

「そないやったらさん・・・」

コビーはそないやったらの肩に触れただけで緊張して、声が震えて、何も言えない。

どうにかしてそないやったらを励ます様な言葉をかけたいのだが、上手い言葉が浮ばない。

その時、コビーの中にそないやったらの感情が広がった。

悲しみ、切なさ、恥ずかしさ・・・それらを覆い隠す程の幸福感。

そないやったらはずっと俯いている。

コビーは勇気を出し、そないやったらを両腕で優しく、ぎゅっと包んだ。
/ 50ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp