第5章 コビーの好きな人
そないやったらとコビーは、また菜園を歩いている。
「これは何て言う植物ですか?」
「これはカレープラントです。こするとカレーの香りがするんですよ」
「へえ、面白いですね」
コビーは鼻を近づけて、香りをかぐ。
「本当だ!カレーの香りがする!」
「こっちはレモングラスです」
「あ、これはレモンの香りですね」
コビーは別の花壇に目をやる。
「あれは知ってます。紫蘇ですよね」
「そうです!おにぎりに梅干しと刻んで入れると、美味しいですよね」
コビーはおにぎりと聞くと、いつもリカのことを思い出す。
「僕、おにぎり大好きです。雑用時代に僕の友達がよく、にぎってくれたので」
「ヘルメッポさんですか?」
「いえ、リカさんという人です」
コビーは何とは無しにリカの名を口にした。
その時、少しだけそないやったらの表情が曇った。
コビーは気付かない。
「リカさんはいつも僕とヘルメッポさんに差し入れをしてくれて、僕等は三人でよく休憩してました」
「そうなんですか・・・」
「雑用時代は辛かったけど、楽しかったな」
そないやったらが立ち止まった。
コビーも慌てて立ち止る。
「その人、海兵さんですか?」
「え?いえ、一般市民の方です」
「そうですか」
なんだかそないやったらは怒っているように見える。
「あの、そないやったらさん?」
「コビーさん、その人が好きなんですか?」
「えっ」
コビーの頭は真っ白になった。
何と言えばいいのか分からない。
「あの・・・あの」
そないやったらが好きだとは言えない。まだ、そこまでの勇気は出ない。
「コビーさん、好きな方がいらっしゃるなら、もう私に会いに来ないで下さい。私、辛いです」
「え、あの・・・僕は・・・」
コビーは泣き出しそうな顔をしている。